第12章 クーリング ダウン
正直に言って、私は信じがたかった。
権利欲、名誉欲、金欲、色欲。どれも全く持たず、何も望まずこのDIOに仕えた。
その者が、憎んでいたはずの者たちに囲まれながら、のうのうと暮らしている。
一体どうひっくり返ってそうなった?血迷ったのか?
そこで私は、深く考えるよりもすぐ行動に移した。
念のため、このメイにプッチを同行させてな。
エンリコ・プッチ。天国へ行くのに必要で信頼できる友である。彼もまた無欲な人間だ。
彼が由来と遭遇した後、私の元へ来て奴から奪った数枚DISCを見せてきた。
そして、疑心暗鬼が確信に変わった。奴は生きていた。
2年前、突如姿を消したと思ったら、日本にいたとは。
奪った数枚のDISCの1枚は、プッチに預けた。
それは奴の記憶が詰まったDISC。それを解析するよう頼んだ。
聞いた話では、かなり雑念が入っているらしく、解明できるまでには相当時間がかかるらしい。
だから、奴の過去が分かるまでに、奴を殺すかどうかかが決まる。
もしメイが言ったとおり“別人”なら、このDIOを阻む者とみなし、始末せざるを得まい。
だが、もし違っていたのなら、違う選択肢もあるだろう…
DIOはワインを一口飲んだ。
「私が欲しいのはそんな言葉ではない。謝罪よりもっと聞きたいことがある。ウォンテッドの使い手。メイよ」
“メイ”。DIOが独自に作ったしゃべる猫。この猫の名前である。
昔DIOは、ウィンドナイツロットで、猫を改造して人面猫を作ったことがあったのでその経験を生かし、猫の声帯を作り替え、人語をしゃべるようにした。
だからメイは、声帯を与えてくれたDIOに絶対的な忠誠を誓ったのだ。
「お前も、あの女のことをよく知っているはずだ。私を除けば、お前が一番知っているだろう。なら、二度目に戦ったその感想とやらを聞かせろ」
「……では申し上げますと、あれは、兎神由来なんかじゃあありません。兎神由来に化けている
・・・・・・
別の人間です」