第11章 そんな言葉じゃあない
女性は愛しているホル・ホースではなく、その彼を守るために殺そうとする男を抱きしめて抑え込んだ。
その隙に、ホル・ホースは馬に乗りこんだ。
「逃げるのはおめーを愛しているからだぜベイビー。“永遠”(フォーエバー)にな」
こうして思わぬ第三者の介入により、敵は逃げられてしまった。
ポルナレフは女性の手を振り払いアヴドゥルの敵を逃がしたことを嘆いたが、ジョセフはそれを宥め、女性の傷の手当てをした。
ポルナレフを抑えているとき、肘が地面にすって怪我をしていた。
(さっきの男。敵にしては何だか憎めない奴だったな…)
由来は、そのホル・ホースという男に悪い印象は持たなかった。
さっきの関係ない人を人形にした猫よりかは、まだ人徳というとのがありそうだったから。
ポルナレフを必死に押さえた女性は、恐らくホル・ホースに利用されていた。
しかし利用していたとはいえ、偽りの愛だとしても、そのために女性に優しく接して、その心の支えになっていた。
女性が体格差が歴然の相手でも、ホル・ホースを何としても助けようとしたこの姿勢が証拠だ。
(多くの人間を人形として、最後に殺す卑劣な奴よりも、あのホル・ホースという男の手口の方が、まだよっぽど悪魔なんかじゃあない…)
そして、あの女性を惹き付けるような言い回しが、ポルナレフと似通っていたからでもあった。
もし敵じゃあなかったら、ポルナレフさんと気が合いそうな奴だ。
(あ、ポルナレフさん……)
ポルナレフさんは、旅の目的を果たしたんだ。妹の敵をとった。
なら、もうこの旅に同行する理由はなくなった。
ならもう……
由来はそんなことを考えながは彼を見つめていると、ポルナレフはみんなより前に進み、後ろを振り向いた。
「さあ!エジプトへの旅を再会しようぜ!」
!
「いいか。DIOを倒すにはよ、みんなの心をひとつにするんだぜ。ひとりでもかってなことをするとよ、やつらはそこにつけこんでくるからよ、いいなッ!」
皆は笑みを浮かべた。そして由来も笑顔が自然とこぼれた。
(私もそうだな……)
一致団結なんて苦手だけど、自分なりに少しずつしてみるか…
「やれやれだぜ」
「やれやれ」
!
由来は承太郎と声が被ってしまい、また左目あたりを抱えたのであった。