第11章 そんな言葉じゃあない
あんな傷を負わされて、生きていられるとは考えにくいからな。
実際こいつは一度生き返ってはいるが。
(……敵は由来を“別の誰か”と勘違いしていた。そして俺は、由来
・・・・・
と思われる女が死にかける夢を見た)
もし俺が見たのは、由来ではなく敵が言った
・・・・・・・・・
別の人間だとしたら?
もしそうなら、今後ろにいる由来が生きていても何の不思議もねえ。
死んだと思われるのは、別の人間だからな。
(やれやれ。話がややこしくなってきたぜ…)
承太郎は密かに願った。
自分が見たのは、ただの夢であることを。
そしてこの旅を経て、密かに気付いてしまった。
彼女の手のひらには……
「……」
承太郎は僅かに、彼女の手を握る力を強めた。
階段を下りたすぐ先に病院の出入り口があり、外に出てみると案の定ジョセフが待っていた。
「お、来たかお前ら」
「お待たせしてすいません」
手はもうすでに離していた。
そしたら急にジョセフは苦そうな顔になり、由来に対して会釈ほどのお辞儀をした。
「すまなかった。わしがちゃんとしていれば、お前は目を……」
由来はホリィのためにこの旅で力を貸してくれている。
なのに誤った判断をしたせいで、彼女に癒えることのない手傷を負わせてしまった。
しかもまだこの先、未来や人生がある若い女性の顔に。
彼女はピアノが大好きなのに、目をやられては……
ジョセフは責任を感じていた。
「そ、そんな。顔を上げてください。私はその覚悟もあって同行を許可してもらったんです。むしろ怪我をしたのは自己責任で、ジョースターさんのせいでは決してありません」
むしろ感謝しているくらいだ。
経緯はどうであれ、目当ての敵に会って、一部の力を取り戻せた。
承太郎が来てくれたおかげで命を奪われずに済んだのだから、片目くらい大丈夫。
それに、まだ目は見えるのだから。
「それより、花京院くんとポルナレフさんが今私以上の重傷を負っているかもしれません。早く彼らのところに行くべきです」
「ああ、もちろんそうだ。さっき、ハーミットパープルで町の地図を念写した。2人は恐らく関係のない者を巻き込まないよう、人気の少ない荒野の方に行き、敵と交戦した可能性が高い。まずは荒野の方に行く」