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白夜に輝く一番星《ジョジョの奇妙な冒険》

第11章 そんな言葉じゃあない



(にしても、承太郎はこの中で一番慎重で疑り深い性格のはず)

敵は、私がDIOの仲間だというデマを流していた。

なのに、承太郎は私を疑わない。

普通、敵だと疑いがある者を信用なんてできない。側に置くわけがない。

大事な人を救うための大事な旅なのに。

(もしこのことを知られたら、破門される覚悟で同行を希望したんだけどな…)

どうしてこの人は、私を疑わないんだろう。


由来の前で歩いていた承太郎は、思い出していた。

ジャズミュージシャンの父に、昔言われたことである。

それはかなり前の出来事で、記憶な断片的なものだが、言葉は印象的だったので覚えていた。


“音楽を好きな人は世界中にたくさんいる。

だけどその中で、音楽を職業にして成功を収める人は、一握りだろう。

好きな思いだけじゃ仕事にできない。

好きなものを頑張っても成果が出せず、逆に嫌いになって投げ出す人も中に入る。

だから、歌や楽器がとてもうまい人は、今まで相当な努力を積んできたんだろう。

それくらい一生懸命になれる人は、決して悪い人なんかじゃあないんだ。

少し手前味噌みたいな話だけど”


確かそんなことを言っていた。

承太郎の父親は今、演奏旅行中。

世界を舞台にするほどの大物ミュージシャンだ。

だからこそ説得力があり、承太郎はその父親の言葉を覚えていた。

一生懸命になれる奴は、決して悪人じゃあない。

(……やれやれ)


由来は大きな背中を追い、しばらくすると階段にさしかかった。

急に背中が立ち止まり、顔があたった。

さっきドアにぶつかったよりも全然痛くなかったが。

(!)

急に止まった?

何だと思ったら、承太郎がこちらに振り向き、手をさしのべた。

(?)

何だその手は?

(え、私、何か借りてたっけな?)

貸していた物を返してほしいのかと、ズボンのポケットを探ったが、何も入ってない。

(シンガポールでペットボトルの水は貰ったけど、それ以外覚えがない)

「何してんだ?」

「いや、貸した物を返して欲しいんじゃ…」

「そうじゃあない。脚を怪我している上、片目だけだとうまく下りれないだろう。気をつけなきゃ転ぶぜ」



じゃあその手は、私が階段で転ばないようにするために?

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