第3章 DIOの呪縛
「正確にいえば…“雪”のスタンドです。雪を凝縮して氷にも変形できる。物を冷やすにはもってこいです」
白クマはうなり声を上げた。
並んでる彼女らをたとえるなら、白クマとそのお世話をする水族館の飼育員のようである。
(俺の“炎”(マジシャンズレッド)とは真逆とも言えるのか…)
“雪”のスタンド…聞いたことがない。
この室内も一瞬で涼しくさせるほどの冷気。
(やはり…ただ者でない)
アヴドゥルは相性的にも敵でなく良かったとホッとしていた。
「それに、今の私にはこれくらいしか…」
「いや…十分じゃ。君には感謝している」
冷静さを取り戻したジョセフは言葉を被せた。
「ワシはもう君のことを信頼してる。娘の手厚い看病、本当にありがとう。だが、何故君はここまでわしらを手助けしてくれる?」
「……」
その疑問は承太郎も同じだった。昨日呼び止めたあの後、彼女が言うには
『登校途中…自分と同じ高校生が石段から落ちるのを見つけ、とっさにスタンドを出したの。同じスタンド使いとは思わなかったけど…』
彼女はかつて刺客からの襲撃で、敵に顔を知られたことにより、以来、登下校中はフードを被って顔を見られないようにしていた。
最初は承太郎を敵じゃないかと疑心暗鬼になりながら、学校見学という形で承太郎の高校へ行きそのまま保健室に潜り込んだ。
「何故俺が保健室に行くことが分かった?」と聞くと、
膝をケガしたならそこ行くだろうと推測したと。
そしてDIOに狙われている事実を知り、敵ではないこと確信した彼女は、承太郎の前でフードを取り外した。
それほどお人好しなのだ。
「……困ってる人が目の前にいれば、自然と体が動く。それだけです。人助けに理屈はないと思います」
スタンド使い…つまり普通の人間でない以上、今まで様々な困難を経験してきたと言ってもよい。
そのため日常でも周りに対し、無意識に石橋を叩いて渡る傾向がある。
まさに、彼女の昨日の警戒心がそれを裏付ける。
しかし、疑心暗鬼とは別の優しさと誠実さと女性らしい凛々しさ。
素直でとてもいい子だ…
(最初見たときは一瞬…承太郎の恋人かと思ったんじゃがのぅ…)
そんなことを言ったら、じじい呼ばわり以上にひどい扱いされるかもしれないと、ジョセフは黙ってることにした。