第11章 そんな言葉じゃあない
(助けてくれて?)
もしかして、インディラは、操られていた時のことを覚えていたの?
敵が言ったことによれば、ウォンテッドは相手の望みを叶え、それと引き替えにその身を操ることができる。
確かインディラは、動かなくなった脚と引き換えに……
「あの子供はレストランでじじいを怖がっていたからな。ここにいたらあんな目立つことはできねえ」
え?じゃあ承太郎がジョースターさんに席を外すようお願いしたのは、まさか“このため”に?
するとカーテンの死角から、インディラの両親らしき2人の大人が現れ、こちらにお辞儀をしてきた。
私が感謝されたくて、助けたつもりではない。今まではそう思ってた。けど今は……
由来は息をするように自然と笑みを浮かべた。
(右目を潰されたかいがあったってわけだ……)
DISCを取り戻したからか、自分のスタンドを理解したおかげかは分からないけど、今なら心にじんわりと感じる。
これが本当の、“思いやり”というものか。
「……そろそろジョースターさんと合流しよう。あなたにここにいてもらうのは申し訳ないし」
由来はベッドから足を下ろして、屈んでブーツを履いた。
「……お前、本当は
・・・・・・・・
どっちがいいんだ?」
「え?どっちって?」
由来は顔を上げた。
また急に何の話なんだ?アイスでもくれるのか。チョコかバニラか。
承太郎は帽子のつばを掴んで下ろした。
「お前、何て呼ばれたいんだ?名字か、名前か」
あ……
『花京院くんの言う通り、やっぱり名字の方が気楽でいいです。名前を呼ぶのも呼ばれるのも、何だかこそばゆいです』
名字がいい。確かにそう言ったけど、今の私の本音は…
「……そうだな。本当は、名前の方が…いいかな」
由来は少し恥ずかしそうにした。
男子に名前で呼んでいいよと言うのは、少し勇気がいる。
逆もまた然り。
「じゃああんたの方はどうなの?正直あんたは名前で呼ばれるのを好まないタイプだと思っていたけど、あんたの本心は何なのさ」