第11章 そんな言葉じゃあない
「……怒ってねえと言ったら嘘だが、もう二度としねえなら何も言わん」
承太郎はこの短期間で、彼女の境遇を何となく察していた。
だから理由も分かっていた。単純なことだ。
彼女は、ずっと独りだったんだ。
だから、手を貸してもらうことに
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慣れてないだけなんだ。
実の両親とも、並ならぬ事情が入り込んでいるくらいだから。
(さっきの敵の言っていたこと……あれは、本当なのか?)
“実の母親に殺されかけたくせによぉ!”
そしてこいつは、それを言われた直前にこう言っていた。
『…敵は恐らく私の記憶を覗いて、その過去の一部を知っているに違いない。だから敵の戯れ言には、真実も含まれている』
『敵が何を言おうと、私はそれを事実だと受け止めて、動揺せず、策を実行する』
『敵が何を言おうと、聞き流してほしい…』
もしあれが本当なら…
承太郎は、シンガポールで由来に言われた言葉がどれほど重いものだったのかを、ようやく理解できた気がした。
『羨ましいです。そんな家族がいて……』