第11章 そんな言葉じゃあない
ジョースターさんと承太郎は、自分たちの家族のために命を懸けた戦いをしている。
だから赤の他人の私の事情に肩入れする余裕なんてないはず。
私がこうしてのんびりしている今でさえ、ホリィさんはDIOの呪縛で命を削っているというのに。
「敵は確かに言っていた。『お前はまだ完全ではない』と。お前は、そのDISCとやらをまだ取り戻しちゃいない。だからまだ能力も戻ってねえ。違うか?」
「……分かった。話すよ。私は2年前__」
カクカクシカジカ
意を決して話した。
2年前からずっと、誰にもこのことを打ち明けず、ただ寿命が縮んでいくのを実感しながら、生活していたことを。
話を聞き終わり、承太郎は思った。
(……じゃあこいつは、自分がもうじき死ぬと知っていて……)
シンガポールでも、列車でも、さっきのホテルでも、彼女は体調が良くなさそうだったのは知っている。
でもまさか、命を失うほどとは。
こいつは異常だ。
承太郎の母親が残り50日の命だと宣告された時、彼女は残りあと数日の命だと分かっていた。
分かっていても、誰にも言わず、戦ってきた。
由来は自分から助けを乞わないタイプだ。
承太郎は、その理由を知っていた。
「……もしかして、怒っている?私が…何も言わなかったから…」
予め言っておけば、何らかの対策を練れて、こんな苦戦することはなかったかもしれない。
承太郎に手傷を負わせることもなかったかもしれない。
由来は、自分の事情に他人を巻き込むのを恐れていたとはいえ、今回自分が何も言わなかったせいで、迷惑かけたことを悔やんでいた。