第11章 そんな言葉じゃあない
由来は布団をずらして、包帯で巻かれている脚を見せた。
見るからに痛々しかった。
「歩く程度なら問題ない。明日には走れるようになる」
包帯をがっしり閉めているおかげで、傷口をしっかり固定できる。
しかし、包帯を外して歩くことで足の血行がよくなれば傷口からまた出血する。
しばらく包帯は取れないだろう。
私はこんなところでのんびり傷を癒す時間はないから、これで耐えしのぐしかない。
「……それほどの傷、本来ならそれ相応の時間をかけて療養すべきだが…」
「が?」
「……お前を置いていくわけにはいかねえ。敵の狙いが分かった以上な」
敵は嘘をついてまで、彼女を連れ去ろうと企んだ。
その目的は、唯一DIOに対抗しうる彼女の能力。
『DIO様は唯一自分に通用する能力を持つソイツを、あえて殺さず仲間に引き入れたことで、最強の守りを手に入れた』
“仲間に引き入れた”という部分は敵のこざかしい嘘だとして、“最強の守り”という部分は嘘ではなさそうだった。
そこらへんの矛盾は気になっていたが、彼女の能力がもし本当なら、DIOの元に渡すわけにはいかない。
由来の傷が完治するまでSW財団の医師に委ね、自分たちは旅を急げば、敵は必ず独りになる彼女を狙う。
それだけはだめだ。
「じじいにも、今回のことについて大まかに話しておいた。長ったらしい説明は苦手だがな」
「ご、ごめん……」
取りあえず謝っておいた。
「お前には、傷を治しながらこのまま俺たちと同行してもらうことになる。お前には苦労かけるが」
「……」
いつもの承太郎なら、もっとがつんと言うのに。
何だか弱気に見える。
相手に苦労かけるなんて、申しわけなさそうな言い方。なんだか違和感を覚えた。
「……てめえ、戦いで不可欠な目を1つやられて、冷静すぎるんじゃあないか?」
冷静すぎる?あなたがそれを言うか。
それはつまり、もっと深刻に考えろって言いたいの?
(えっと、心配してるの?私を)
視力は戦う上で必要不可欠な五感だ。彼女はその1つを潰されてしまった。
承太郎は、片目になった彼女は今後の戦いに支障が出ることを心配した。
しかし由来は顔を曇らせることなく、むしろいつもより前向きだった。