第10章 決着
「あともう少しじゃぞう!!」
ジョセフはハーミットパープルを引っ張り、二人を慎重に引き上げた。
「……手、大丈夫、なの?」
さっき凍らせて……
「インドは気温が高いから、すぐに元に戻る。凍ったのはせいぜい表面の皮膚だけだ」
承太郎は大丈夫だと言った。
(あれ、なんか……この人と普通に話すのは、久しぶりな気が…)
ふとそんなことが頭に浮かんだ。
朝はスタンドのことで少しギスギスしていて、さっきまでは戦っていたから、ようやく余裕が出てきた、ということか。
(空中で引き上げられている時に思うことじゃあないな)
ついに承太郎たちは崖の上に着き、承太郎は由来を肩から下ろした。
「由来!顔を撃たれて……!!」
由来は心配されるよりも先に、意識を失っているインディラの容態を見た。
右目は血が染みて使えないから、左目で見た。
「その子は大丈夫。ただ寝ているだけじゃ」
インディラは「うーん」と小さく言って寝返りをした。
(よ、よかった…)
この様子なら敵の催眠は全て取り払ったはずだ。
ほっと一息ついた。
グニィ~
(あ、れ…?)
由来は立ち上がろうとしたが、右目だけめまいに襲われた。
フラァ
平衡感覚が麻痺したように、倒れた。
バッ
しかし承太郎が真っ正面からすくい上げるように抱きかかえて、地面に倒れるのを防いだ。
「由来!」
由来はぐったりして、全体重を承太郎に支えてもらうほど弱っていた。
たとえDISCが取り戻せても、さっきまで死んでいたのだ。まだ体のダメージは残っている。
(顔から血、流しすぎたかな……)
右目が痛い。どんどん意識が……
「早く街の医者に診せなければ…気をしっかり持て!」
ジョースターさんが何か言っているようだけど、だんだん聞こえづらくなってきた。
死にはしない。ただちょっと疲れただけ。
気を失う前に言っておこう。
「……ごめん…なさい…巻き込んで」
声は小さいながらも承太郎には伝えられた。
「由来!」
承太郎はらしくなく心配そうな眼差しを向けている。
あれ、そういえば名前呼ばれるの、初めてだったか。
ちょっと嬉しかったな。
由来は少しだけ微笑んで、意識を再び手放した。