第10章 決着
人生というのは、意外に呆気ないことが多い。
急に地震がきたり、反対車線から車が突っ込んできたり、友達の訃報を聞いたり。
なぜなら、我々人間はこの世の事柄を知り尽くしているわけではないからだ。
もし知っていれば、敵の行動全てを把握することができて、DIOがいるエジプトへ最短で行けただろう。
この世を知り尽くすなんて、そんなことは不可能だ。
すべてを知り尽くす神なら可能か、何てことは考えない。別に私は神の存在を信じているわけでないから。
(ま、さか……本体が…猫だったなんて…)
通りで、どこにも見当たらない、はずだ……
敵が撃ってきた弾丸で気を失い、後ろの崖へと仰け反り、地面から足が離れた……
ガシッ!! パラァ……
しかし間一髪承太郎が由来の腕を掴み、落ちるのを防いだ。
承太郎は崖の先の凹凸の形をした所を、スタープラチナでボルダリングのように掴んで、何とかギリギリで彼女を助けた。
(じょ、承太郎!!)
ジョセフは、隣にいたはずの孫がいつの間にあんな場所へ行ったんだ?と驚きながらも、崖に急いで向かった。
(ぬッ…!)
承太郎はぐったりしている由来の腕を掴んでいたが、肝心の由来が目を覚まさない。
顔からかなり出血していて、意識が無い。
腕伝いで脈がまだあるから死んでいない。けど…
(こっちもかなりやべえぜ…)
承太郎が見上げた先には、あの猫が不敵な笑みをこぼして、こちらを見下していた。
承太郎は応戦したいところだったが、スタープラチナで体を支えているからそれもできなかった。
そしてジョセフがこちらに来るまでに、敵が自分たちを崖から落とすのは造作もない。
“その女を最初から切り捨てておけば、こんなことにならなかったな。まさに、本末転倒だったな。承太郎!!”
グワンッ!!
ウォンテッドはスタープラチナの腕に手を伸ばした。腕の呪いを付けるために。
「ッ!」
“ホワイト…シャドウ……”
パッキィーン ピキピキピキ
『!』
突如、猫の首が凍り出して、体全体も氷の塊と化した。
首に付けられた氷の弾丸の傷から全身へと。
(まさか、首に食い込んでいた氷の弾丸から冷却しただと?)