第10章 決着
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「避けろォ!!その猫が真の本体だ……!!」
承太郎が向こうの由来に叫ぶよりも、敵が引き金を引くのが早かった。
由来はインディラの頭に手を置き、目を閉じて集中していた。
ゾザザザザァ
手の平から少女の頭の中へ波動のようなものを伝え、脳細胞の一つ一つをこと細かに分析していた。
そして自分の頭にもう片方の手を置くことで、通常の脳細胞を確認して、少女のを再構築した。
(確かに覗いてみれば、“あの敵のスタンド”(ウォンテッド)の催眠で、脳にかなりの雑念が入っている……でも、私なら治せる)
まさか“この能力”が、こんなときにも役に立つとは。
さっきまではDISC1枚だけの体調だったけど、今は2枚ある。だからできる。
催眠を完全に解くことができれば……
「!」
由来は気配を察知して、目を開けてその方向を見た。
拘束したはずのウォンテッドが、こちらに銃を向けている。
しかもその本体らしき者は、猫だ。
あの銃には、弾は入っていない。
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私が使い終えた時は。
だけど、敵が隠し持っていて、それをすでに銃に込めているに違いない。
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「避けろォ!!その猫が真の本体だ……!!」
いち早く気付けたから、普通は避けることはできる。
承太郎に言われなくても分かっていた。
でもそれができないのだ。今は。
(おいおい。私は今、糸に針を通すほどの精密な作業をやっているんだ。今、この子から手を離したら……)
この子の脳細胞を弄ってるんだ。今手を離せば、この子の脳は人間としての機能を保てなくなる。
あと数秒で完治するのに…あと少しで……
ダァンッ!!
ドゴォン
敵の弾丸は、彼女の顔に直撃した。
それは彼女を倒すには十分な威力だった。
(うかつ…だったな……)
さっき、銃を落とさなければ……
由来はインディラの頭から手を離してしまった。
そして由来の背後には奈落の底へと通じる崖があり、彼女はゆっくり後ろに倒れた。