第10章 決着
「……アイツは巻き込まれた人間の手当てに行った。その前にじじい」
「あ、ああ。そうだな」
ジョセフはハーミットパープルを出した。
由来はインディラの容態を診た。
見たところひどい外傷はなく、脈拍は心拍に異常はない。命に別状はない。
(だけど、敵が言ったのが本当なら、たとえ目覚めたとしても……)
心を操られたままかもしれない。
(…念には念だ)
由来は少女の頭に手をかざして、集中した。
ジョセフは苦い顔をした。
「おかしい。ハーミットパープルでこの雪で絵を浮かび上がらせようとしたが、何も出てこん。まるでテレビの砂嵐のように」
ハーミットパープルで頭を読む間、敵が動けないように監視している承太郎も、苦い顔になった。
(やはり、真の本体とやらじゃなければ、情報は引き出せない、ということか…)
残念ながら、有力な情報は得られなさそうだ。
モゾモゾ
「ん?」
敵の衣服の背中の部分が動いているのに気が付いた。
(中に何かいるのか……?)
ジョセフは由来の方へ目を向けた。
すると、妙な既視感に襲われた。
一見したら、普通に少女の容態を見ているのだが、少女の頭に触れているその手が……
・・・
(あれは…!)
「おいじじい!よそ見するな!ソイツから離れろ!」
バシャーン!
『!』
あまりにも急な出来事であった。
警官の頭が、風船を針で刺したように一瞬で割れたのだ。
頭蓋骨と血がまるで花火のようにドバッと散った。頭の中に爆弾でも仕掛けれられていたように。
もし承太郎が気付かなかったら、後ろに下がるのが間に合わず巻き込まれていたかもしれない。
「くそったれが。用済みになった操り人形を殺したというのか?真の本体というのは!」
ジョセフは辺りを見渡したが、人影は何も見えない。
「ん?」
承太郎は妙な物を見つけた。
さっきの血飛沫で注意が逸れたが、でもさっきまでなかったものが、そこにはあった。
ここから約4mほど離れた、氷の地面の上に。
急に動き出した。
(あれは…!)
スタープラチナで確認したら、それは猫だった。
背後には、ウォンテッドが拳銃を構えて、由来に向けていた。
(まさか、さっき背中でモゾモゾしていたのは……!)
真の本体は、偽の本体の背中の中にいた。