第10章 決着
(この警察官はジョースターさんにお任せするとして、私は……)
由来はそれよりも気にかかることがあった。
操られていた少女、インディラの安否だ。
彼女は足を失い絶望していた。その弱みにつけ込まれて、足を取り戻す代わりに敵の傀儡と化してしまった。
幼い子供ほどその心は純粋であり、それが故、心を簡単に受け渡してしまったのかもしれない。
承太郎に目を向けると、「行ってこい」というように頷いた。
「貴様、本当に何者だ? 」
敵は再び由来に問い詰めた。
「いくら生まれつきでも、お前はまだ17歳の若さ。しかしスタンド使いとしての経験値は、あのアヴドゥルよりも上と見る」
「!」
(何だと?)
ジョセフはあまり話が飲み込めず、ハーミットパープルを発動させる手を止めた。
「……先に私を“誰か”と勘違いしたのはそっちだろう?何であんたに私のことを教える必要がある?最も、私が何者だろうとあんたには関係ないし、教える気もさらさらないよ」
さっきまで敵は挑発する事ばかりを言っていたが、今は何というか、由来の核心に迫るような言葉を放っている。
由来は敵に背を向けて、気絶しているインディラの元に向かおうとするも、敵の言葉は止まない。
「お前が俺を殺さないのは、ただジョセフに考えを念写させるためだけじゃあないだろう?殺せば俺と同格になるのが、そんなに嫌か?人助けなど偽物の願いを持つ偽者ふぜいが」
ピタッ
由来は敵に向き直った。
その顔は別に怒っているわけではなく、冷静そのものだった。
「人殺しを殺すことが人殺しになるとは思わない。けどあんたごときのために手を汚すのも滑稽で虚しいだけ。それに殺さない理由は、強いて言うなら…
あんたの生命なんて、これっぽっちも興味がないからだよ」
「!」
なん……だと?
敵は呆気にとられたような表情になり、由来はもうこれ以上敵に興味を無くしたかのよう、その場を後にした。
「……承太郎。何があったのだ?由来は……」
さっきの彼女。いつもとはちょっと違う風に見えた。
敵の前だからそりゃ誰でも、戦いのモードに入るが、彼女の場合、何だか彼女の場合は…
言い辛いがまるで、情け容赦ない感じで、いつもの優しさが……
ジョセフはそんな違和感を覚えていた。