第10章 決着
さっきまでのような、人を傷つけたくない心と自分のスタンドの凶暴性に葛藤していた彼女とは違っていた。
確かに、己のスタンドは人を簡単に殺せるほどの殺傷力を持っている。
だからとても怖くて、力を制御できなかった。
故に、蔑まれてきたこともあった。
だけど、たとえ苦境があったとしても、それを今後の人生を呪う理由にしてはいけない。
(思い出したんだ。あの人が言ってくれたことを……)
『……君がこの“影”で、今まで辛い思いをしてきたのは知っている。これが今までもそしてこれからの君の人生の暗雲になり得ることも』
『だけどね、たとえ辛い思いをしてきても、それをこれからの人生を諦める理由にしては、絶対いけないんだ』
『これからの君の運命を決めるのは、君の周りの環境や、ましてや君のスタンドでもない。君自身だ』
あのときは、私の気持ちを知ったかぶりのようなことを言って、耳障りだと思っていた。
でも、今なら分かるよ。
あの後に言ってくれたことも。
『他にもこの名前にした理由はあるさ。それはね、
君が“陰ならがら”人を助けることができるようにって願いを込めているんだ』
『最初は無理にやらなくていい。ただ“陰ながら”でやってみれば、君もいつか相手を、自分を思いやれるようになる』
『君のスタンドなら、きっとできるよ』
あれは、スタンドの凶暴性を隠すためということではなかった。
きっとそれが本当に人を助けたいという思いにつながって、それで私を認めてくれる人が現れる、という意味だったのかもしれない。
現に、私はあの石段でも“陰ながら”助けたから、認めてくれる人ができた。
(私はもう、スタンドに怯える必要はない……)
「私がつくのは、DIOなんかではない。ジョースターだよ」
由来はふっきれたような表情になり、敵はますます疑念が湧いた。
(俺の知っている由来は、そんなことを言う奴じゃあなかったぜ)
その姿も声も、俺の知っている由来で間違いない。
なのに、言っていることと雰囲気が違う。
そもそも日本で見つけたときも、それが由来とは到底思えなかった。
(まさか、肉体は由来でも、中身は違う人間の魂が入っているというのか……?)