第10章 決着
(グアッ。ば、馬鹿、な…)
死ぬまで追い込んだはずが、何故俺の方が追い込まれている?
承太郎がこんなところまでどうやって来たかは知らんが、加勢に来たところで問題じゃあなかった。
由来は死んでいた。奴を庇いながら戦うなど、いくらあの承太郎でも不利だった。
そして何よりも、こちらがホワイトシャドウを使うことで、攻撃できない承太郎を足止めして、由来を奪い取る、はずだった。
なのに、何故だ。
(しかも今の由来の動き。ただの合気道なんかじゃあない。たとえDISCの一部をさらに取り戻したとしても、あそこまで動けるはずが…)
まさかDISCを取り戻したことで、戦いの記憶が蘇ったのか?!
体の奥底にある記憶が、今の奴の体を突き動かしたのか。
決着がついたところで、承太郎は由来の元に駆け寄った。
「どうやら終わったようだな」
「……うん。でもまだ気は抜けない。この警察官はただ操られているだけだから、真の本体がまだ分からない」
もしかしたら、今この状況でさえも遠くから見ているかもしれない。
「な、何故だ……」
敵は氷の足と手枷で地面に拘束されている状態で聞いてきた。
その姿だけでも、十分屈辱的だ。
「なぜ、能力の氷を使えないくらい、弱っていたのに。なぜ俺に氷で攻撃できた?」
敵の首にはまだ氷の弾丸が埋め込まれていたが、傷口からの出血も凍って止血代わりなっていた。
「……何事も自分の思い通りになると思ったら大間違いだよ。それに言っておくが、正確にはホワイトシャドウは氷のスタンドではなく、“雪”のスタンド、だよ」
「……何故だ。何故だ。なぜ同胞である俺をこんな仕打ちに。お前は俺たちと同じだ。DIO様の助けなくしては生を感じられない。俺たちよりも、そこのジョースターを選ぶのか?」
「……」
承太郎は敵の戯れ言に耳を傾けながら、隣の由来に目を向けた。
由来は呆れたようにため息をこぼした。
「言ったはずだよ。過去を知ったからその心を読めるとは思うなと。いやアンタの言っているその私の過去とやらもほとんどでっち上げだよ。私はDIOなどに会ったことはないし、過去でも今でもこの先でも、そんな殺人鬼に手を貸す気など無い」