第9章 雪辱
(さて、敵のことだけど、今目の前にいるのは、操られている被害者だったな……)
敵の能力は、別の人間に本体を移すことができる能力。
だから、操られている警官の腕を切断することはできない。
私のホワイトシャドウの射程距離に入らせた瞬間凍らせて、拘束するしかない。
(問題は、敵は易々と凍らされてくれないことだ)
敵はホワイトシャドウの氷撃のタイミングも恐らく分かっている。下手に距離を取って戦おうとすれば、間合いを詰められて腕を掴まれる。
そうなれば、私はまた……
由来は敵に向けて指を指した。
「あんたはDIOへの“忠誠“心”は他の奴らより頭一つ上らしいが、“人間としての“心”は腐っている。あんたは私の大事なものを傷つけすぎた。私の友人を傷つけた報いも、アンタの屈辱的な敗北で償ってもらう」
「ハンッ。図に乗るなよ。みなし子が」
バッ!
由来は氷の上を滑りながら走り、敵との距離を一気に詰めた。
次で今度こそ決着が付く。
(ハンッ!今のこの氷の上なら、奴の射程距離は7mというところだ。入った瞬間避けて、奴の腕に触れればいい!)
俺は自らこちらに来る哀れなガキの腕を掴むだけでいいんだ。
敵と由来の距離が7mを切った瞬間、
“氷撃”(アイスシャドウ)!
パッガキィィン!!
氷の床の上にさらに氷が敷かれた。
ジャンプ!
しかし、敵はタイミング良く跳んで、氷撃から逃れた。
そして自らさらに距離を詰めた。
「!」
「いきなり距離を詰められるのは驚くだろう!その隙にお前の腕に再び我が呪いを付けてやる!!」
(アイツ…!)
承太郎は持っていた銃を敵に向けた。
がしかし、それより彼女の行動が目に入った。
「!」
クルリッ!
敵が腕を触る瞬間、氷の滑る性質を利用して、しなやかな足さばきで敵を避けた。
そして敵の後ろをあっさりとって、逆にその腕を掴んで地面に叩き伏せて、身動きを封じた。
ダァンッ!
敵の手足を少し傷つけて血を出すことで、四肢を凍らせやすくして、敵を地面から逃れられないようにした。
本当に一瞬の出来事だった。
「滑るのを気をつけろだって?誰に言ってるのかな?氷の上は私の独壇場だよ」
生まれたときから、ずっとね……
もう敵は身動きをとれなくなった。
「決着」