第9章 雪辱
「!」
敵は驚いた顔で、急におどおどし始める。
由来はさっきみたいな弱い姿勢に決してならず、相手を威圧するような眼差しを向けた。
(人は大体言われたことの逆をしたがる。やるなと言われればやりたくなるし、やれと言われたらやる気がなくなる)
この敵が私が思っている通りの性格なら、私の挑発に乗るはず。
「一つ良いことを教えるけど、今までの戦いで私もあんたのスタンド能力とその弱点と戦い方も全て見切った。そして
・・・・・・・・・・
今度は独りじゃあない。“私たち”(ジョースター一行)を、独りで対抗できるほど果たしてアンタは強いのかな?他人の力任せだから聞く必要もないか」
由来は独りで、しかも能力を奪われていた状態を付け狙われたことで、一度死んだ。
だけど、次に敵が襲ってくるとすれば、仲間と一緒にいるとき。
もう今度はへまはしない。
「あんたはあんたなりのその偉業とやらを果たすために来た。なのに何の成果も出さず、しっぽを巻いて逃げるとは。あんたみたいなふとどきものの部下を持つDIOが哀れだな。あいつの顔にも泥を塗る結果になるだろうね」
「何だと…?」
「自分の思い通りにならなくなって投げ出すなど、なら最初からかかってくるなよ。ここで逃げ出すというなら、あんたの覚悟はその程度か……来るなら……最後までとことん来いッ!」
「……言ってくれるじゃあねえかくそガキが」
敵は逃げる姿勢から今にもこちらに走ってきそうな戦いの姿勢に変わった。
「おい」
承太郎は由来がここまで敵を挑発するということは、よほど勝つ自信があるのかと思った。
あの大人しめな彼女だから、なおさら無表情で驚いた。
「次で決着をつける。あなたも了承済みなはず…」
『倒してえならお前が倒せ』
承太郎はそう言った。
・・・・・・
「今回裁くのは私にやらせてほしい。それかダメかな?」
「やれやれ……足滑らすなよ」
承太郎は彼女の意志を汲み取って後ろに下がった。
今は保健室の時と逆の立場だ。なら、この落とし前をつけるのは彼女が筋というもの。
何より“由来を信じている”と、彼女にそう言ったから。
(もしまた危なければ、この残り一発の銃を、敵の脳天に撃ち込む)
ゴゴゴゴゴゴ
承太郎は懐に拳銃を隠し持っていた。