第9章 雪辱
(今でも私は自分に普通の人のような心があるかは、まだ分からない。でも、ちょっとした確信はある)
承太郎がいてくれると、何だか少し心強く思うよ。
巻き込みたくはないと思っていたのに、今は違う。
勇気が出てくる。誰にも負けない気がする。堂々と立っていられる。
ヒョイ
由来は氷の盾の上から後ろに降りて、承太郎の隣に立った。
そして盾を消した。
「2対1で卑怯かもしれないが、あんたも私に2対1で挑んできたから、文句を言われる筋合いはないってことだよね?」
力はまだ不完全でも、少なくとも今の敵を倒す自信はある。
承太郎が協力してくれるならなおさら。
自信は過信なんかじゃあない。自分の可能性を信じること。
私はどちらかというと、自画自賛も好まないし自信はそんな持てないタイプ。
だけど今だけは、“自分の可能性”(ホワイトシャドウ)を信じることができる。
「……フッ、ハハハハハ。そうだな。俺には文句は言えまいな。だが、俺がこれからすることに、お前も文句は言えねーぜ」
「何?」
承太郎は身構えた。
「そう身構えるなよ。別にお前らは何もする必要はねえんだ。ただ、逃げさせてもらうとするぜ」
『!!』
敵の背後にウォンテッドが現れ、体を白いもやで包んでいく。
その雰囲気からして、本当に逃げるつもりらしかった。
「そう易々逃がすか」
しかし承太郎は敵を易々と見逃すつもりはなかった。
敵が由来に与えたツケを考えたら、まだ殴り足りなく、何より気になっていたから。
敵が彼女を付け狙う真の理由というのを。
ガッ!
しかし由来は承太郎の腕を掴んで止めた。
「待って!いい。追う必要はないッ!」
「!」
由来は敵を逃すことを選んでいる。
自分がされた仕打ちなど忘れて、このまま見逃すというのか。
確かにそうすればこれ以上戦う必要はなくなる。その方が賢い行いかもしれない。だけど…
「お前……」
「何故ならこのまま行かせれば、奴はDIOに始末されるだけだから!」
「!」
敵は彼女の言葉が聞き捨てならず、逃げ足を止めた。
「そんなはったりが通用すると思ったか由来?DIO様は私を信頼していらっしゃる」
「そうかな?果たしてDIOは、二度もしくじった奴を許すほど寛容なのかな?」