第9章 雪辱
由来の声が聞こえたが、その彼女の姿が見当たらない。
「ど、どこだ?!」
「ここだよ」
彼女は自分で作った氷の盾の上に、軽々と乗っていた。
さっきまで弱々しい様になっていた彼女は、もうそこにはいなかった。
その顔も覚悟を決めたように引き締まっていた。
ももの弾丸の傷も、氷で塞がっていた。
「くっ…!き、貴様…!」
まるで上から見下すように敵を見つめた。
「DISCに触れた瞬間でも、感じ取れたよ。今まで欠けていた物が戻ってきた感触を」
承太郎。あんたのおかげで、思い出せたよ。
私には悲しみだけがあったわけじゃない。
かつて私にも、大切な人たちがいた。
そこでちゃんと楽しい思い出もあったんだ。
本当にその人たちが大切で、このホワイトシャドウの力で守りたいと思っていたんだ。
その自分の本当の気持ちってものを、私はずっと忘れていた。
フッ
由来は承太郎に微笑みかけ、敵を睨んだ。
「“ウォンテッド”の使い手と言ってたね。私を“自分の姿でさえ見れない盲目者”と言ったね。だけど、私の姿を見れず目がくらんでいたのは、あんたの方だったな」
ゴゴゴゴゴゴゴ
彼女から発するオーラは間違いなく戦いの猛者のそれと同じもの。
普段はすみっこでひっそりと大人しく電柱のように立っているのに、今は大きな氷の盾の真上に目立つように立っている。
「い、粋がってんじゃあねえぜ。何なら1ついいことを教えてやる。お前は
・・・・・・・・・・・・
まだ取り戻しちゃいねえぜ。お前の能力は数枚のDISCに分散された。お前はその内の1枚を得たにすぎん!」
「……」
由来は言われるまでもなく、既に分かっていた。
実際2年前に、取られたのは二枚だけでなくそれ以上だったのだから。
「……残りはDIOが持っているのか。それともお前のような刺客に預けているのか。まあ、旅を進めれば結局は辿り着くだろう」
由来は、「は?それが何か?」とでも言うように、全く動揺を見せなかった。
(くそッ。なぜ“最強の盾”が壊れたんだ!いくら俺が由来のスタンドを使ったからと言っても、ホワイトシャドウが作ったのは間違いない!それがなぜ……)
もし壊れずに防ぎきることができたら、この場から逃げる算段もあったものを…!