第9章 雪辱
「……」
由来はうつ伏せで顔を伏せて痛みに耐えている。
どれほど痛いか、由来が手を握る強さで分かった。
その姿を見て承太郎は思い出してしまった。
夢で見た、彼女が左肩に重傷を負い、悶え苦しむ姿。
まるで違う場所、違う患部でその痛々しさが再現されているようだ…
(もう少しだ…発案者が気ィ失うんじゃあねえぜ……)
“俺たちスタンド使いは社会からのハブられ者。お前がスタンド使いであるが故に、苦痛の人生を送ってきたのはよく知ってる。DIO様はお前に救いの心と手を差し伸べているのに、何故それに気付かない?!”
ズッ!
脚の骨をこすったほど奥に食い込んでいた弾をようやく抜き、傷口から血が溢れ出た。
(頼んだよ……)
「!」
岩陰に潜む奴らがようやく動きを見せた。
スベ~~ル
なんと由来だけが地面の氷を勢いよく滑ることで、岩から姿を現した。
(何?!)
敵は予想外で目を丸くして驚いた。
スタンド能力がまだ満足に使えないどころか脚を撃たれて歩けない由来がたった独りで出てきたのだ。
ホワイトシャドウをそりがわりにして。
能力は使えなくても、スタンドをそりのように乗ることはできた。
しかも敵である自分に向かってこず、全く違う方向に向かって。脚から血を流して、意識朦朧としているようななりで。
恐らく承太郎のスタープラチナが、由来の体をカーリングのように勢いよく投げたに違いない。
(だがなぜその承太郎が直々に戦いに来ない?)
承太郎は岩から姿を現さず、なりを潜めている。
まさか由来をエサにしてこちら側の注意を引いて、自分はその隙に逃げることを考えているのか?
(とんだゴミくず野郎だったらしいな。助けに来たくせにその仲間を囮にするとは。まあその方が俺も都合がいいぜ)
由来独りだけなら、スタープラチナに恐れることはなく的を絞れる。
敵は、滑って移動中の由来の背後を狙って、勢いよく滑ってむかった。
「スピードスケート勝負か?面白い!」
敵の注意が
・・・・・・・・・
岩から完全に反れた。
(今だ…!)
ダァンッ!
承太郎は岩陰からがら空きになった敵の死角に向けて拳銃を撃った。