第9章 雪辱
「!」
承太郎は由来の策の全容を聞いた。
・・・・・・・・・・・
「そんなことができるのか?」
「…可能。むしろ、
・・・・・・
あなたの方は?この策の大半はあなたのスタンド能力が必要になってくる。頼んどいてなんだけども…」
「……やったことはねえが、できる」
さすが承太郎だ。
私の突拍子のない策をやりこなす自信がある。
(今の声は敵には聞こえていないはずだ。もう時間はない。早く始め……)
“いつまでそこでこそこそしている?一体何を企んでいるんだ?”
「!」
敵がまたテレパシーで頭の中に直接話しかけてきた。
“俺がこうしてあえて近付かずじっとしているのは由来。お前がどっちみち血を流しすぎて意識を失うからだ。その後に承太郎を出し抜いて、気を失ったお前を連れ去るのは造作もない”
「……」
「承太郎」
由来は自分のハンカチを口にくわえた。
「……後悔するなよ」
“スタープラチナ”
承太郎はスタープラチナで由来の足の中に食い込んでいる弾丸を摘まんで、開いた傷口を逆流するようゆっくり動かした。
「!!」
グッ…ア……!
想像以上の痛さで思わず絶叫しそうになった。
しかし声を上げれば敵に気付かれて、策も全てパーになる。
それを我慢するために、くわえている自分のハンカチを噛みしめ、作業の支障にならないようなるべくじっとした。
ハンカチは唾液で濡れた。
足の中にずっと留まっていた異物が、体の流れに逆らってゆっくりと動く。
本当に打ち所が悪すぎて、神経が悶え苦しむようだ。
(だけどもこんな痛み、あの時にくらべれば……!)
“貴様がたとえ自分のスタンドの恐ろしさを否定したところで、お前の過去は変わらない。お前が一番分かっているはずだ”
敵は岩陰に潜んでいる2人を何をしているかも知らず、ただ隠れているだけと思い込んで、出てくるように挑発ばかりした。
由来はその戯れ言に耳を傾けられるほど余裕はなかった。
承太郎もまた、スタープラチナの精密な動きで由来がなるべ苦しまないよう弾丸を抜くことだけに集中した。
(あと半分だ……)
苦しむ彼女に声をかけたかったが、敵に気付かれることを恐れ、代わりに手を握り、由来は承太郎の手を無意識に強く握った。