第9章 雪辱
承太郎は由来が思った通り、驚いた顔になった。
「お前。それを抜けば、またかなりの血を失うぞ。そうなればてめえは…」
「分かっている。自分の体だから」
ドクドク…
由来はハンカチで傷口を抑えている今でさえ、出血している。
それほど撃ち所が悪かったのだ。
応急処置のハンカチを外すだけでもまた血がかなり出るはず。
それに弾丸を抜けば、鍋がふきこぼれるように、血が流れ出るだろう。
ハンカチで再び抑えても、出血を完全に止めることはできず、致死量になるまでそう時間もかからないはず。
(やっと協力要請がきたかと思えば、まさか自殺の手伝いをしろと……?)
承太郎は聞くまでもなく、分かっていることがある。
それは、今の由来は氷の能力は使えないから、止血もできないのだ。
「……致死量になる前に、敵から不意打ちでDISCを取り戻せば、私は元の力を取り戻して、こんな傷すぐに塞げる」
「だが、もし間に合わなかったらどうする?」
承太郎はこれまでに、その冷静な性格とは裏腹に大胆な行動を起こしてきた。
ケーブルカーから窓を壊して外へ飛び出したこともあった。
しかし、他人が大胆な行動を起こそうとするのは、あまり体験したことがなかった。
それも自分から命を捨てるような賭けに出るような。
承太郎は冷静であるからこそ、彼女の傷は思った以上に深刻なのが分かっていて、彼女の提案に不安を感じていた。
「私はしぶとい。それに、たとえ死にそうになっても、あなたの言う通りホワイトシャドウが守ってくれるなら、私はそれに賭ける。それに…」
しかし由来は自分の意見を曲げることはなかった。
いつも弱気で大人しめで自己主張が弱いあの彼女が。
つまり、それほど自信があった。その理由は、
「こんなことはあなたしか頼めないんだ。あなたのスタープラチナとあなた自身が持つ強さが必要なんだ。あなたがいるからこそ、私はお願いできる」
「……」
彼女の強い眼差しを前に、承太郎はこれ以上は断れなかった。
シンガポールの時とデジャヴだった。
女子高生に頼まれたら断りきれないとは、承太郎も普通の高校生みたいな一面はちゃんと持ち合わせていた。
「……抜いてどうする?傷を悪化させてでもやりたいことってのは何だ?」
「……私はやりたいのは__」