第9章 雪辱
……何だか、分かりづらいけど…
「……まあ…それで…いいかな?」
由来は微笑んだ。
「!」
コイツ今…
(恩?それはほぼ私の方にあるよ…)
承太郎が来ていなかったら、私は今頃、吸血鬼の餌に成り下がっていたのかもしれない。
ホワイトシャドウのことを気付かせてくれなかったら、ここまで取り戻したいと強く思うことはなかった。
気付かせてくれたのは他にもある。
敵が私にした行いは侮辱だ。それをもっと怒るべきだと。
確かに、戦いにおいて怒りとは動機になり得る。
私は誰かを傷付けられたら、怒りを感じながら冷静を保って敵と戦ってきた。
だけどそれは外向的感情だ。
私が傷付いても侮辱されても、何も思わないでいた。
思わなければ、怒らず敵の思惑にハマることはないし、むしろそれで良かったと思っていた。
しかし、自尊心が多少なければ、怒れない。
内向的感情がなければ、戦いの原動力にならない。
私はこれからの戦いに生き残るには、承太郎が持っているようなものを、よく知る必要がある。
(この人にはあって、私にはないもの。こんなところにもあったんだな……)
そんなことを言いたかったが、その余裕がなさそうだ。
「で、お前は俺の協力の申し出を応じるとして、これからどうするかだ」
「……アナタはどう思う?」
「敵の頭にもう一度素早く拳を叩き込めば、あのDISCが出てくるのは間違いねえが、それには“不意打ち”が必要だ」
由来も同意見だった。
敵はさっき、真っ正面からのスタープラチナの拳を受け止め、危うく腕に触れそうになった。
触れれば腕に刺青が浮き出て、生命のエネルギーのようなものをどんどん奪われる。
それは由来は経験済みだった。
(不意打ち……何かいい手は…ないかな?)
承太郎には悪いがおぶってもらってこのまま逃げることも考えたが、それはダメだ。
ジョースターさんたちと合流しに街に行けば、一般人を巻き込む可能性が高くなる。
つまり決着は、今つけなければならない。
ここでつけなければ、私の名誉も、ホワイトシャドウの名誉も取り戻せない。
逃げれば、その使命から逃げることと同意だ。汚名を背負うことになる。