第3章 DIOの呪縛
(OH MY GOD…こ…これは彼女の傷口に塩を塗ってしまった感じじゃ…)
周りはジョセフのことを見て、何か気まずい雰囲気になった。
「…でも、少し私を信じすぎではないですか?」
「なに?」
さっきの気が引けた態度とは一変し、彼女は声も変えて冷静に自分のことを話した。
「ジョースターさんが言うように、あなたから見れば…私は通りすがりのスタンド使い。ですが本当は、DIOに抹殺を命じられた追っ手かもしれない。今言ったこと全ては嘘で、あなたたちを騙しているかもしれない…とね」
『!』
彼女自身が、そんな仮定の話を持ち込んできたことで、部屋に緊張感が漂った。
それが本当なら…
「そうだったら…君がジョジョを助けた事実はどうなる?あの状況も君は私の方に加担することだってできたはず」
途中から来た花京院が会話に入った。
「私がそうしたのは…花京院くん?だったかな?朝の君みたいに、味方だと相手に信じ込ませ油断させるための罠かもしれない。アナタが私に覚えがなくても、相手を思い通りにする方法やスタンド能力も…世にいくらでもある。まさに…さっきの肉の芽がそうさ」
花京院が由来を敵とみなしたのも…彼女が承太郎の手助けをしたのも、全ては彼女の計画の内。
現れたタイミングも、DIOから差し向けられたと考えると朝から承太郎を監視していたということにもなる。
ジョセフやアヴドゥルも、そんな彼女のことを深く考え込んだ。
(この少女…本当は私たちの敵で、自分から言うことで疑いをなくすことを狙って…一体何が目的なんだ?)
アヴドゥルは無意識のうちに、スタンドを出す構えをした。
そりゃ、承太郎が来るまで赤の他人だった相手をいきなり信じてしかも家に泊めるのも、考えようには甘すぎるかもしれない。
承太郎は、石段でスタンドを見た時は警戒したが、戦いを経て自然に敵ではないと認識した。
理性的な彼も、由来が言うことは理解できた。しかし…
「いや…それはねえだろうぜ」
ドーン
「!」
同じくあの場にいた承太郎にはある確信があった。
「俺はコイツから一度も殺気を向けられなかった。あの状況は、無関係の人間も庇ったくらいの“お人好し”だったぜ…」
怪しい相手には特に注意深い承太郎がここまで…
彼はそれくらい、彼女が敵とは思えなかったのだった。