第9章 雪辱
ニヤリ
ウォンテッドの口の端が上がる。
手を上げた瞬間、由来にめがけて大量のつららが差し迫る。
ヒュゥ〜ンッ!
それもロケットランチャーのように早く、体が万全な状態でもかわすことは難しい。
「ッ!」
僅かな力を振り絞って、半透明のホワイトシャドウを前に出した。
氷が出さなくても、盾代わりにして、自分の身を守ることくらいは……
ドガッ!パキィーンッ!
「!」
しかし、その間にスタープラチナが入り込み、つららを打ち落とした。
「承太郎!!」
オラオラオラオラオラッ!
迫り来る透明の刃を一つ一つ正確に拳で叩き落としている。
しかも、砕け散った氷が私に当たらないように力の加減を抑えているのが分かる。
オラァッ!
最後の氷を叩き落とし、2,30もの氷刃は全て砕け散った。
氷の霧が段々と晴れてきて、由来の目の前には承太郎の背中があった。
(あ……)
承太郎の両拳は霜焼けのように、赤紫に変色していた。
(……何なんだこれは)
由来には、見覚えがあった。
まだお互い名前も知らなかったあの最初の時。
『食らえ!我がスタンド、ハイエロファントグリーンの…!』
敵が、いや敵だった花京院くんが攻撃しそうな気配を見せてた時、私はスタンドの力を発揮できなかった。
『エメラルドスプラッシュ!!』
同じような遠隔操作の無数の攻撃が出される寸前、
・・・・・・・・・・・・・・・
また助けてもらってしまったんだ……
力を取り戻して、助けになりたいと、そう決めたはずなのに……
・・ ・・・・・・・・・・・・
(結局、あの時と同じじゃあないかッ…!?)
自分の非力さを嘆くように俯いていると、不意にそばに転がり落ちている物に気付く。
「!」
氷の刃が砕かれた一部。
承太郎が防御して壊した時に散らばった物だ。
不意にある思いが頭をよぎる。
これで、
・・・・・・・・・・・
ウォンテッドの呪いごと、切り離すことが出来ないだろうか。
考えるよりも先に、氷の刃を手に取っていた。