第9章 雪辱

（コイツ…！まだこんな力を残していやがったのか…！）

いや、これは元々由来の力だ。元は一体どれだけ……

　・・・・・・・
『俺の本当の能力を忘れてんじゃあねえぜ！』

「！」

大きな氷の右側面から、不意打ちのようにウォンテッドが現れ出て、承太郎の腕に手を伸ばした。

由来はその光景を這いつくばる体勢で遠くから見ていた。

「承太郎…！奴の腕に触れたら、私と同じように＿＿！！」

いや待てよ……そうじゃあない…！

奴の能力の本命は、相手の腕に刺青を作り、願いを叶える代わりに自分の願望人形にする能力だ。

だが、今の奴には、私と同じ氷雪の能力が使える。

ということは、まずやることは……！


「"足"だァ承太郎！敵は足を凍らせて、身動きを取れなくさせるつもりだ！！」

「！」

承太郎はその一瞬、腕を敵に触れられるよりも、脚に注意して身を引いた。

『何ィッ？』

スカッ

ウォンテッドの腕は承太郎に届かなかった。

由来の読み通り、ウォンテッドは承太郎の腕でなく、脚を狙うつもりだった。


再び距離が空き、防戦一方な状態へと逆戻りだ。

しかし、動きは封じられずに済んで、本人の承太郎以上に、由来がほっとした。

『さすが本家なだけあるな。俺の動きを読むとは。不本意にスタンドを有していながらも、使い方をよく熟知している』

（クッ…！）

敵の賞賛や敬意は、それを通り越して挑発にも聞こえてくる。

今すぐにでも立ち上がって、その醜いスタンド面を、氷漬けにして歪ませたいが、残念ながら立ち上がる力すらない。

死んで体が硬直していた後もあるが、何より、スタンド能力を奪われているせいで、体が言うことを聞かない。

『だが、動きが読めるだけで俺に勝てるとでも？承太郎の腕も、果たしてこの氷の進撃をいつまで防ぐことができる？
・・・・・・・・
お前を守りながら…！！』

「！」

ピッガァーーンツ！！

氷山のような大きな氷が砕けて分解し、つららのような鋭い武器と化した。

それらが浮遊して、倒れている由来に先端が向く。

「ッ！」