第9章 雪辱
「……」
承太郎は屈んで、由来をゆっくり下ろした。
「分かった。置いていく」
由来の大切なものを取り戻すため、そして彼女をスタンドの呪縛から解放するための最善策。
守りよりも攻めて、敵を1秒でも早くぶちのめす。
承太郎の得意分野だ。
学生帽を被り直し、由来を指差す。
「ただし、あとで説教されるのを忘れるな。覚悟しておけ」
「……お手柔らかに頼むよ」
由来は腕の痛みに耐えながらも、ひきつった笑顔で承太郎を見届ける。
『来たか…!』
ウォンテッドは由来の能力で再び氷撃を繰り出す。
ズババババーンッ!
「人の力をそうやって、我が物顔で使ってんじゃあねえぜッ…!」
オラァッ!
ブォッコーン!!
怒りを込めたスタープラチナの拳が、迫り来る氷撃を一刀両断の如く、払いのける。
シャァワン〜!
『ッ!』
破壊された氷の衝撃で、冷風が一気にフィールド内を舞い、寒さが増幅された。
もはやここはインドでは無い。氷の別世界だ。
太陽の日差しが差し込んだとしても、由来の氷は特別なスタンド製であるため溶けない。
『ケッ!瀕死の仲間置いて来るとは、見かけ通りの薄情者らしいなお前は』
操られている警官は、ウォンテッドは笑いを交えながら挑発的なことを言う。
しかしそんな軽口に釣られる承太郎ではない。
「何とでも言え。てめーが俺を出し抜いてアイツを連れ去るほどの力は、もう残ってねえのは判っている」
『!』
「何がともあれ、てめーは許さねえ。
・・・・・・
よりによってアイツの死に顔を見せた以上はな…!」
承太郎は氷と化した床を上手く渡って、敵に近付いていく。
『ハンッ!その大切な仲間の力で死ぬほど、皮肉な最期はねえだろうなァ!』
バァァンッ!
しかし敵は能力の出力を底上げし、さらなる氷を作り出した。
まるで氷山そのものが丸ごと切り出されたようなデカさだ。