第9章 雪辱
ゾワァ〜
由来の腕の素肌には、本物の鎖が食い込んでいるような刺青がある。
蠢く蛇のようにとても痛々しく、承太郎は改めて見る。
(やはりこの刺青。あの新聞記事に出ていた被害者の死体や、昨日俺達が泊まるはずだったホテルの変死体に刻まれていたものと同じだ…!)
コイツを解くためには、やはり本体をぶちのめすしかねえ。だが……
「……」
由来は承太郎の思い悩むような顔を見る。
抱えられている状態のせいで、いつもよりも鮮明に顔色が分かってしまう。
だから、考えていることも分かる。
「……承太郎。私を置いて行って」
「あ?」
「逃げろとは…もう言わない。
・・・・・・・・・・・
敵を倒しに行って欲しいと…言っているんだ…!」
「!」
由来は呼吸を整え、何とか自分の体力と正気を保つ。
「敵の懐に潜り込んで本体を叩くにしたって、能力を解除するにしても、DISCを取り戻すにしても、私を抱えたままでは、アンタはスタープラチナのパワーを100%発揮できない。そうでしょう?」
「……」
承太郎は黙り込んだ。
反論をすぐ言わないということは、由来の言うことに一理あるということ。
承太郎のスタンドは由来とは真逆の、近距離攻撃型スタンドだ。
どんな障壁をも壊す圧倒的なパワーを誇るが、守りながらの戦いでは、その効力を十分には発揮できない。
(しかし、こいつから目を離せば、奴のスタンドが不意をついて奪いに来るはずだ…!)
敵のスタンドは由来の力を悪用するほど、そのものに力はねえ。
さっきテレパシーで俺たちを干渉したとこから、恐らく遠距離タイプだ。
なら、1人にするのは……
ガッ!
「?」
承太郎が考え込んでいるところを、由来は学ランの襟を掴んだ。
「らしくもない。それでもアンタか…?」
「!」
いつもとはまるで違って強気な口調。
いつ死んでもおかしくない状態の面影を一切見せず、不器用な笑みを交えて言葉をかける。
「アンタが言ったはずだ。ホワイトシャドウは、私を守るためにずっとそばにいてくれたと。だから私は、
・・・・・・・・・・・・・・
アンタの言葉を信じたくなった」