第9章 雪辱
「グッ……アッ…」
その両腕に刻まれた鎖の刺青が、蠢くようにして、由来の体内を蝕んでいた。
ゾワワワワワワワ〜
絶叫するほどの痛みが走っているにも関わらず、声を上げないよう耐えている。
そのうめき声が、余計にその苦しみを物語っている。
「由来ッ!」
『我がスタンドウォンテッドの目印は、腕だけじゃあ無い。未だにソイツの体内に刻まれている。いくらDISCを取り戻したとしても、たった1枚じゃあ焼石に水というところだ』
承太郎は由来を抱き寄せる。
さっきよりぐったりしていて、もはや苦しむ気力もない様子だ。
これでは、また……
『おめでたい奴らだ。それで救った気になったか?救われた気になったか?所詮、人の本質は変わりはしないッ!!』
ズサササササッ!!
「ッ!」
承太郎は即座に由来を抱きかかえて、スタープラチナの脚力で宙に飛んだ。
ズシャアアア!
瞬間、隠れ場所にしていた岩陰が、雪崩のような圧力に押しつぶされていく。
一瞬にして一面が白い世界へと変貌し、着地すると雪が足首にまで達する。
承太郎は離れている敵を注意深く見る。
(ジャンプする一瞬で、これほどの広範囲で歩き辛いコンディションを作りやがった。これが、由来の力の
・・
一部なのか?)
「ハァ……ハァ…」
「!」
由来の苦し紛れの呼吸が白がかっている。
寒さで体力を消耗している。マズイ。
目は虚で意識もさっきよりはっきりしていない。
この時、承太郎の頭には、二つの選択肢が浮かんだ。
この場は逃げ、彼女を一刻も早く、SPW財団の医師に診せるか。
このまま由来を抱えた状態で、敵の懐に潜り込み、再び頭に拳を叩き込み、DISCを取り戻し、由来に力を取り戻させるか。
グッ
(やれやれ。やることは多そうだが、やるしかねえな)
・・・・・・・
選ぶまでもなく、腹が決まっていた。
しかし、それに異議を唱える者がいた。
「待……て…」
「!」
本人である由来だった。
「腕の…呪いは…アイツが解除しない限り…解けない……DISCを…取り戻したとしても……助からない!」