第9章 雪辱
「ッ!」
由来は黙り込んでしまった。
「お前の言う理屈なら、今の状況。あの時と立場が逆転してんじゃあねえか?」
承太郎からしたら、自分の血族の因縁の戦いに他人を巻き込んでいるようなもの。
由来は他人だった承太郎を、学校をつけてでも助けようとしたお人好しバカだった。
承太郎とジョセフ個人の問題の話を聞かされてもなお、ここまで旅についてきた。
つまり、「お前が言うな」というやつだった。
「てめーは好き勝手周りの奴らを助けて、自分だけは満足して、周りの気持ちなんざ考えねえ。お前のやっていることは、てめー自身のポリシーに反しているんじゃあねえか」
由来にとってのポリシー。それは、受けた恩は必ず返す。
それは相手にとってもそうだ。
お互いが納得して、認め合い、笑顔を向け合う。
由来の人助けには、それらの大切な部分が無い。
(救われた奴の気持ちが納得しねえなら、それはただの自己満足だ。いや、救ったてめー自身も、気持ちが晴れねえなんざ、それ以下だ……)
なぜなら彼女は
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自分が救われることを望んでいないからだ。
「……スタンドは使い方次第で大きく変わる…か。確かに、てめえの言う通りかもしれねえ。だが少なくともお前は一つ、
・・・
勘違いをしているぜ」
「?」
承太郎はポケットから何かを取り出して、由来に見えるようにして手を広げた。
氷のつぶてだった。
おはじきよりも大粒くらいの大きさだ。
(それは…!)
紛れもなく、
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ホワイトシャドウが造形したスタンド氷だ。
自分のスタンドの能力だから、見間違えるわけがない。
しかし、作った覚えも全くない。
一体どういうことだ?
「どこでそれを?」
「アヴドゥルたちを探していた途中に、道端に転がっていたのを見つけた」
それも、ありんこが列になっているみてえに、とんでもない量だった。
これはその一部に過ぎないがな。