第9章 雪辱
ドグドグドグ……
敵の銃で撃たれた箇所からはまだ出血が続いている。
特に打ちどころが悪かった脇腹の方がひどい。
脚の方は弾が貫通したからいいものを。
残念ながら腹の中には、内臓とは違う邪魔な金属が入り混じって、未だに体内が驚いている。
「グッ…!」
試しに立ちあがろうとしても、体が言うことを聞かない。
どんな動作においても、腹部に力が入る以上、出血が増す一方だ。
「ッ…!」
「おい!あまり動くなッ!これ以上血が出るのはやばい!」
珍しく承太郎が取り乱して不思議だ。
それ以上に自分が惨めになっていき、自然と体勢が俯く。
(くそッ!せめて……出血を止める程度の…僅かな氷だけでも発動できれば…!)
先ほど敵と相殺したホワイトシャドウの氷撃は、無意識に振り絞った最後の力だ。
つまりこの傷を、塞ぐことはできない。
(今の私はボロ雑巾よりも役に立たない。スライスして砂糖に漬け込んでマーマレードになれる蜜柑の皮の方がよっぽど役に立つさ)
傷口から承太郎に目を向ける。
「承太郎。私を置い…」
「『置いて逃げろ』ってか?『重症で動けない私よりもポルナレフさんやアヴドゥルさんたちを助けに行くべきだ』と?」
「ハッ!」
承太郎はまるで若き頃のジョセフのように、相手の言うことを予期した。
「つまりてめえは、人が散々苦労して生き返らせた努力を無碍にするっつーことか?冗談じゃあねえぜ」
「……冗談なら最初から言わないさ。アンタには、家族を守る大事な役目があるじゃあないか。仲間の犠牲も覚悟の上のはずだ」
助かるか分からない瀕死の仲間を助ける労力があるなら、それをもっと他に生かすべきだ。
駒の動かし方を一つでも間違えれば、そこを疲れて全滅する。
由来はある"昔の経験則"の基で、そんなことで頭でいっぱいだった。
「それに、これは私個人の問題でもある。アイツの狙いは、私だ。本来の目的を忘れて、アンタが不用意に介入するべき問題じゃあない…!」
「……」
言い争いを好まない穏健な由来が、ここまで他人に自己主張するとは。
らしくないというより、こんなに自我を表に出す由来は初めて見る。
承太郎はそんな風に内心思っていた。
だったら……
「……だったらなぜ
・・・・・・・・
この旅に同行した?」