第9章 雪辱
その翌日、私は早起きしたらホリィさんがすでに起きていた。
せめてお手伝いでもと、皿の配膳をした。
ガラッ
『!』
起きて来た承太郎が襖を開け、一瞬目が合ったがすぐに反らした。
同い年とはいえ、まだ気軽に話せる仲でもないから。
いや、昨日の彼の様子を見る限り、女性が苦手そうだから、あまり話しかけるのはよしとこうとも思っていた。
ジョースターさんと花京院はまだ起きていなく、4人での奇妙な朝食会だった。
その後は、アウドゥルさんに一声かけて、家の電話番号を書いたメモを渡した。
『何かあったら連絡してください』と。
私はこのまま昨日の挽回のために学校に行くつもりでいた。
ホリィさんに一言お世話になりましたと言ってから。
((おっかしい…なぜゆえこんな静か?))
探してみたら、ホリィさんは台所の冷蔵庫のそばで意識を失っていた。
その後駆けつけてくれたアウドゥルさんが、これはDIOが原因だと教えてくれた。
ホリィさんはいなくなってはいけない、あたたかい存在。
私には家族はいない。特に帰るべき場所もない。
ジョースターさんたちの中で、一番捨て駒に相応しい存在。
残り少ない寿命だけど、私にもできることがある。
スタンドを取り返せば、まだ生きられるかもしれない。私はスタンドで誰かを救うことができる。
ホワイトシャドウを嫌いでなくなることができる……
そして現在。
由来は己の非力さを呪う。
承太郎に手を煩わせてしまったことを、とても悔いていた。
朝のホテルで、彼に言いたかった大事なこと。
『アナタは、そんな余裕はないはず…』
『たとえ私が襲撃された事実があっても、DIOの全ての刺客の目的はたった一つ。アナタを殺すことじゃあないか』
この旅の目的。自分はその手段であって、決して目的ではない。なってはいけない。
なのに承太郎は、自分の身を危険に晒してまで、私を助けようとしている。
そんな本末転倒になってほしくない。
自分には助けられる価値はない。
身内や家族が1人としていない自分が、他の人より優先的に助けられる。
その現実が許せなかった。