第9章 雪辱
2週間前のこと。
私はあの朝も、両腕の呪いがありながら登校していた。
ホワイトシャドウで極限まで冷やして、痛覚を麻痺させていた。
今日は体育の授業があるから、またトイレで着替えなきゃな。スタンド能力である腕の刺青を見られるわけにはいかないからだ。
そんなことを思って歩いていたら、野次馬があることに気付く。
((ん?前の方。何だか行列ができている))
しかも全員が隣町の共学の女子高生ばかり。
新しいお店でもできたのだろうか。
((いや違う。人か……))
女子がたむろっていたのは、1人の男子生徒の周りだ。
身長がひときわ高い目を引く存在。
((何だか大変そうだな。まるで美術品扱いされているようで…))
由来はその男子生徒に同情した。
他人に必要以上に干渉されるのは、とても鬱陶しいし、嫌に決まっている。
『やかましいッうっとおしいぞォ!』
『キャーあたしに行ったのよ』
『あたしよ』
案の定男子生徒は怒鳴った。
呆れて先を急ごうとして、それに女子高生がついていく。
「……」
由来はその女子高生たちのことを決して羨ましがることはなかった。
むしろ集団行動はあまり好きではなかったし、浴びせられる視線も好きじゃない。
(こんな攻防戦を毎朝繰り返しているの?)
私は2年前の攻防戦以来、通学路をたびたび変えて、警戒しながら学校に通っている。
だけどこの道は今まで一度も通ったことはないから、通りすがる人も前の方にいる人たちあまり会ったことのない人だ。
何で今日に限ってここに変えたんだろう?まるで何かに引き寄せられたように。
「……」
私は無意識に自分の腕に触れた。
(氷で冷やして感覚を麻痺させてごまかしているけど、私の命の火は、あと何日もつか……)
明日かもしれない。いや今日かもしれない。
だけどそんなこと考えても、別に何の問題もない。
何故なら私には、それを悲しむ家族がいないから。
自ら死のうとは思ってはいない。そんな疲れるようなことはしたくない。
だけど生きたいとはっきり思うことはあまりない。
以前なら、何度かあったかもしれない。でも、この世界では……