第8章 雪解け
「……」
由来は"力"(ストレングス)の幽霊船にいた時に、確かに言った。
『スタンドとは、使い方次第で善にも悪にもなりうる凶器』だと。
もし由来が、自分のスタンドを本当に癌だと思っているのであれば……
・・・・・・・・
(そりゃあ間違いだ)
「……言ったはずだぜ。敵のてめえの言っていることなんざ、一言一句何一つ信じられねえと。本人から聞き出すまでだ」
この敵だけは絶対に逃さねえ。
とはいえ、氷の地面でも身動きが取れねてってのに、下手に動けない。
だが逆に、由来をどこかに置いて戦いに臨んだとしても、それこそ敵の思うつぼだ。
承太郎はポケットにある氷の粒を取り出した。
溶けかかっていて、元の大きさの半分以下しかない。
(これが全部溶けきったら、コイツの命は終わるってわけ、か……)
『氷は溶けません…少なくとも私が生きている限り』
承太郎は由来の言葉を思い出す。
(どうやってホワイトシャドウをくぐり抜け、敵に近付くか。さっきは煙幕を使ったが、同じ手はもう通用しない。やはり、叩くしかないか。どうする…?)
“違う。スタンドを狙うんじゃあない。敵本体の頭を狙うんだ”
「!」
突然、誰かの声が聞こえた。
(何…?!)
周りを見渡しても、声の主らしき者がいない。
敵の者でも、ましてや由来の物でもない。知らない男の声だ。
(誰なんだ今のは?しかも、
・・・・
頭を狙えだと?)
承太郎は言葉のスイッチを入れられたように、ピンと来た。
(そういや、敵は自分の頭に何か妙なモンを入れていた…!)