第8章 雪解け
地面は雨上がりで濡れている。だから現俺のホワイトシャドウは近距離というより、中距離くらいはいける。
「さて、話はそろそろ終わりにして、貴様にとどめを刺すか。それか、今の話を聞いて、ソイツを渡す気になったか?」
「……さっきから訳分からんことくっちゃべってんじゃあねえぜ」
ピクッ
敵の表情が余裕な笑みから気に食わなそうな顔に変わった。
「確かに、俺はコイツのことを何も知らねえ。だが、てめーら外道に手を貸すような奴じゃねえってことくらい分かる。敵の言うことなんざ信じられるか」
「……ハンッ。だろうな。普通はそうだな。なら今俺が言ったことは独り言でも思えばいい。だがな承太郎。お前が今やっていることは的まずれじゃあねえか?」
「何?」
「だってな、お前は今こうして命かけてでもその女を助けようとしている。だがお前の本来の目的は何だ?貴様が助けるべき相手は、もっと別にいるんじゃあないか?」
敵はまた承太郎を諭すかのような口振りをした。
ここまで核心に迫ってくるような敵は今まで無かった。
「そんな駒のために時間食って戦うほど余裕もないだろう。その女も、目的とは関係ない自分のために戦ってほしいなんて望んじゃあいねーだろ?だからずっと黙っていたんじゃあねーか。その死んだ女1人より、今ピンチだがまだ生きている花京院とポルナレフの2人の救出に行った方がよっぽど勝率は高いってのによ。それにその女が死んだところで、協力者は誰でもよかったんだろ」
あ?
何言ってやがる、コイツ…
誰でも良かった、だと?駒、だと?
さらに次に言った敵の言葉が、完全に承太郎の反感を買った。
「それにソイツは自分のスタンドさえ憎いと思っていた。だからスタンドを奪うのも容易かった。自ら望んで死を選んだも同然だ」
ゴゴゴゴゴゴゴ
2人の間に第三者が容易く入り込めない空気が漂った。
「お前はソイツのことをまるで分かっちゃあいないな。これは奴がずっと望んでいたことだ。コイツは、自身のスタンドで世間から偏見を持たれ、辛い思いをして生きてきた。コイツにとってスタンドは、癌のようなもの。それに解放されるのが望みであり、今お前がやっていることは、ソイツの願い下げだってことだ…!」