第8章 雪解け
さっき承太郎がスタープラチナで地面の氷を叩き割ったのは、雪煙を起こすためだけではなかった。
殴った力を利用して、滑るためであった。
作用反作用の法則だ。力を加えれば、その方向とは真逆に同じ力が加わる。
氷では滑って摩擦が少ないが、スタープラチナの圧倒的なパワーなら、敵のそばまで滑って行くほどの力は出せた。
「スタープラチナ!!」
承太郎は敵の懐に拳を入れようとした。
もし敵のスタンドが間に入ったとしても、パワーも素早さもこっちの方が上だから、かわすまでだ。
敵をぶちのめすチャンスは、
・・・・・
今しかない!
「し、しまった……
なんーてな」
敵は笑った。
ドガァァンッ!!
「!」
スタープラチナで殴った感触はあったが、それは男の懐ではなかった。
固かくて冷たい何か。
(これは……!!)
殴っていたのは、氷でできた壁だった。
氷の結晶のような装飾をして、とても分厚い盾のような。
承太郎から敵を守るようにそび立っていた。
見た目もそうだが、承太郎が最も驚いたことは、
(スタープラチナの渾身の一撃を入れても、
・・・・・・・・・・
ヒビ一つも入ってねえ、だと?)
これは一体…?
「これが、由来の
・・・・・
本来の能力だ」
承太郎の後ろにホワイトシャドウが迫ってきて、承太郎はやむを得ず、男から離れた。
・・・・・
「本来の能力、だと?」
「そうだ。元々ソイツのスタンドは、お前のスタープラチナのような、近距離攻撃型ではない。
・・・
近距離防御型だ」
「!」
ホワイトシャドウの戦闘スタイルは、氷結で相手を凍らせ身動きをとれなくして、爪や牙でダメージを与えるものだと思っていた。
しかしこの氷の盾を作ったのがホワイトシャドウというなら。
(“防御型”だと?)
「由来のこの氷の盾を破った者は、今まで誰一人としていなかった。あのDIO様でさえ、破壊し得なかった」
「!」
「だから皆は口を揃えて呼んだ。『最強の盾』と。それ自体が由来の通り名にもなっていた」