第8章 雪解け
承太郎が声を出してしまうほど、その力は凄まじかった。アザラシの頭を噛み砕くほどだ。
グォォォッ!!
ホワイトシャドウは噛み切る前に口を離し、鋭利な爪でスタープラチナの頭を傷付けた。
ズサァァ!
スタープラチナは素早い動きで回避したが、爪の先がこめかみあたりに当たった。
ポタ…ポタ……
承太郎は頭から血が出てきて、抱えている由来の頬に滴り落ちた。
(さて、これからどうするか…?)
敵は自分のスタンドを出そうとしない。恐らく、俺の近くに出したところでスタープラチナですぐ返り討ちにされると思っているんだろう。
だが問題は、ホワイトシャドウをどうくぐり抜けるかだ。
(……攻撃はできねえ…だがさっきのように掴み合いになればゼロ距離で氷結され、その時点でゲームオーバーだ)
承太郎が考えた唯一の手段は、何とか敵の懐をぶちかまして、由来の生き返らせ方をゲロさせることだった。
ぶちかますといっても、喋れなくなる手前のギリギリにまでだが。
そして、それを実行するのは今すぐしかない。死後時間が経てば経つほど、息を吹き返す可能性は徐々に下がっていくから。
由来は無意味なことは絶対しない。体を冷やしたのは、絶対に意味があった。
自分はまだ死んでいないというのを、駆けつけてくる仲間に伝えるためにやったんだと、承太郎はそう確信していた。
その努力を、溶かしてしまうどころか、水の泡にするわけにはいかない。
(満足に歩けねえ。なら残った移動手段は……)
オラァッ!!
バコォンッ!!
スタープラチナで地面の氷を豪快に割り、雪煙を起こした。
(何だ?煙幕のつもりか?小賢しい)
数十メートル離れたところにいる敵は、ホワイトシャドウでその雪煙の中に入っていった。
(さっき見たところ、承太郎はホワイトシャドウに攻撃するのを躊躇った。由来を奪って人質にしようかと思ったが、やはりこの方が効率的だな)
この氷の床では、満足に動けまい。
「どこにいるんだ?」
「ここだぜ」
「!」
承太郎は敵の真横の3m離れたところにいた。
(何ィ?!どうやってここまで…!)
「歩けねえなら、滑るしかねーだろ」