第8章 雪解け
「何で“てめえ”(死んだ由来のスタンド)が、ここにいる…!?」
そんなことを聞いてもスタンドが話すわけがない。
らしくもなく承太郎は想定外の展開に少し焦りを見せた。
ガルルルッ……
シロクマの赤い瞳の動物の姿のスタンド。正真正銘、由来のホワイトシャドウだ。
しかし、今まで由来のそばにいた穏やかな熊とは正反対で、とても獰猛そうでこちらを見ていた。
ずっとこちらに向けて鋭い目つきで威嚇をしている。
(スタンドは1人1体だと、以前アヴドゥルは言った。なぜ2体も持っている?しかもその内の1つが、由来から奪ったスタンドだと?)
スタンドを奪い、それを使うなど……そんなことが…!
本来スタンドは、本体が命を落とせば、その精神力も無くなり消滅する。
コイツの場合、2年前、スタンドをこの敵に大部分を抜き取られ、常温に晒された氷が徐々に溶けるように、スタンドが徐々に無くなっていった。
その影響なのか、手が死人のように冷たかったのも、シンガポールにいたときも、明らかにおかしかった。さっきのホテルでも。
その時のダメージが積み重なって、残りのスタンドが全て消滅し、命を落とした。
そう思っていたが、まさか…
(本体が死んでも、
・・・・・・・・・・・・
スタンドがまだ生きている、だと?)
この時承太郎は、
・・・・
ある疑問が浮かんだ。
さっきまでは由来の死を前にして少し頭が冴えなかったが、今の衝撃で少しはいつも通りの勘を取り戻した。
由来の死体は、腕だけでなく体全体が冷たいのだ。さっきまで冷蔵庫に入っていたように。
しかし、普通では
・・・・・・・・・・・
それはあり得ないことだ。
人は死後も、僅かながら体温が残るはず。しかし彼女にはそれがない。
「まさか…!」
その理由は、1つしか考えられなかった。
(コイツは自分がやられる前に、スタンドで体を急激に冷やしたに違いねえ!)
普通の体温だと、体内の細胞が多くの酸素を必要とする。
酸素を運ぶ心臓が止まっていたら、細胞はどんどん死んでいく。
だから体を急激に冷やし、体内の機能を全て強制的にストップさせたんだ。