第8章 雪解け
「!」
男は顔をこわばらせた。どうやら予想が当たったらしい。
「……ああ。そうだ。確かに2年前、由来を痛めつけてスタンドを奪ったのは俺だ。そしてあの時の無様さ傑作だったぜ。カメラが無くて残念なくらいに」
「……」
承太郎はすぐにでも敵を倒しに突っ込みたかったが、それよりも確認したいことがあった。
由来のブレザーの袖をまくってみた。
(やはりな……)
ホテルと列車の変死体に刻まれていたものと同じ刺青が、彫られていた。
ずっとこれを隠していたのか。俺たちと行動を共にしたときすでに。2年前からずっと。
『相手を思い通りにする方法やスタンド能力も…世にいくらでもある』
日本でアイツはそう言ってた。
あれは、自分のことも言っていたのか。これをスタンドにもつけられて、力の大半を制御されていたってことか。
袖を直して、次に気になることがあった。
・・・・・・・・・
(敵の奴。俺に全く殺意がねえ)
俺がこうしてコイツの容態を診ていても、不意打ちをしてくるどころか、逆に距離を取って見てやがる。
俺と戦う意志が全くないようにみえる。一体何が目的なんだ?
「……フ…フハハハハハッ」
男は急に笑い出した。透明人間にくすぐられているかのように。
「急に頭おかしくしてんじゃあねえぜ!」
承太郎は声を荒げた。こういうなめきった態度を取られるのを極端に嫌うからだ。
仲間の死を侮辱されたみたいで、全くもって気に障った。
「ハハハ。お前は、大事そうにその女を抱えているように見受けられるが、お前はその女のことを知っているのか?自分の本来の目的よりも、その女がそんなに大事か?!」
「なんだと…?」
「DIO様は由来の存在を、お前たちよりも前からずっとご存知だった。その能力、身元までも、何もかもだ。その理由にまだ気付かないのか?」
男は死んでいる由来を指さした。
「お前がやっていることは“本末転倒”以外の何物でもない。
大事そうに抱えているその女はな、承太郎……
・・・・・・
お前の敵だよ」