第8章 雪解け
2年前の男は、べっぴんな彼女が欲しいという願いを。
インディラという小娘は、足を取り戻したいという願いを。
レストランにいた赤いドレスを来たケバい女は、名物のワインが欲しいという願いを。
今操っているこの警察官は、昇進するために上司を殺したいという願いを。
そして承太郎。貴様は由来を助けたい一心で、今願っているのはその救命道具だ。
お前の願いを今俺が具現化した。
それに触れた途端、お前は腕に刺青が出て、我がスタンドの術中にはまるのだ。
そこで拳銃自殺させて、そして由来を回収する。
(早く拾えよ。その瞬間、俺はDIO様の悲願を果たせる。DIO様の願いを叶えられる!)
承太郎はAEDに手を伸ばした。
きた!!
「オラッ!!」
バコンッ!!
「!!」
承太郎はそのAEDをスタープラチナでそのまま叩き壊した。
壊れたAEDからは煙が上がった。
「な、なにィィィ!!」
コイツ!救命道具を、た、叩き壊しやがった!?スタープラチナの自慢のパワーで!
欲しい物を目の前にして、こんなことした奴、今まで一度たりともいなかった!
俺が具現化するものは嘘偽りのない本物だ。
スタンドが作ったものと、気付くわけが……!
「こんな場所にこんな都合のいいもんなんて、置いてあるわけがねえ。バカ丸出しだ」
承太郎は由来をお姫様抱っこしたまま、岩陰からその姿を現した。
「随分ナメられたものだな。俺がこんなネズミ取り以下の罠にかかるとでも?」
承太郎は首を傾げて相手を挑発する。
「ぬぬぬ。貴様…!!」
(この男、今俺が考えていた物を作った。それを取った奴は死ぬ。そういう能力なのか?)
だがそれが本当なら、コイツはその罠にハマったということか?
だがコイツはそんな奴じゃあねえ。用心深い奴だ。
今までの敵とはなんなく戦ってきたコイツが、
・・・・・・・
この敵に限って、命を落とした。
もし、命を落とす要因があるとすれば……
『だッ……だから、お前んとこの“小娘”の能力を知っていたDIOは、アイツのスタンドを奪ったんだろ』
あの意味が、DIO本人ではなく、DIOが介した敵スタンドの仕業だとしたら…
「……2年前、コイツからスタンドを奪った敵ってのはお前だな?」