第8章 雪解け
それでも怖い気持ちを押し殺して、スタンドを使った。
敵を倒してスタンドの存在を正当化し続けた。
これは人助けだ、と。
でも、そんな生半可の気持ちがある人が、勝てるわけがなかったんだ。
今まで何とか勝てたのは、承太郎が助けてくれたから。
花京院くんの時も、ダークブルームーン、ストレングスの時も、あの人が駆けつけてくれたからだ。
最初から決まっていたんだ。スタンドを満足に操れない私が敗北するのは。
ジョースターさん。約束、守れなくてすみませんでした。
ホリィさんを助けるはずだったのに。
結局私は誰も助けられなかった。いくら足掻いても、スタンドの運命を変えることは出来なかった。
スタンドはどうせ殺人道具。そんなこと言われなくても分かってる。
私はただ……ホワイトシャドウが破壊と殺戮を好むようなスタンドなんかじゃあないことを、証明したかった。
かつての私の恩人が、私に施してくれたのと同じように、ホワイトシャドウも人を助けることが出来ると、証明したかっただけなんだ。
“兄貴”のようになりたかった…だけなん……だ
由来はピクリとも動かなくなった。
もう心臓は止まって死んだだろう。
男はスタンドを出して、その亡骸に手をかざした。
(さて…早くコイツを回収せねばな。腐ったら元も子もな……)
ドガァンッ!!
「!!」
“スタープラチナ!!”
「オラッ!!」
バゴォンッ!!
男は突如何者かに殴られ向こうに飛ばされて、由来の亡骸から離れてしまった。
「ぐ…ぬッ!!?」
何…?!雪が積もってできた障壁を利用して、死角から雪ごと殴ってきた…!?
スタンドで殴り飛ばされた衝撃を抑えて、何とか体勢を崩さずに地面に着地した。
(な!何だ!いきなり気配もなく?!)
手元にちゃんとホワイトシャドウのDISCがあることを確認した。
大丈夫だ。奪われていない。
誰かが殴ったことで、もくもく雪煙が出て、その姿が見えない。
(誰だ?そしてアイツの死体は……)
雪煙が消えると、その正体が分かった。
「な!貴様は……!」
なぜここに……?
ドドドドドドド
承太郎が由来を抱き抱えていた。
ヒュゥ~
冷風で学ランの裾が靡いた。