第8章 雪解け
「分かるさ。お前が過去に何があったのかも。お前は教えてくれなかったが、大体はDIO様から聞いたさ」
「!」
DIOが……バカな。そんなことは…有り得ない。だって……
「……人の過去をみたところで、人の心が分かると思ったら、大間違いだぞ」
「罪のない赤子が殺されかけたことを考えれば、おまえの気持ちはよく分かるさ」
え……?何だって?
「DIO様はお前の苦しみを理解されている。俺達スタンド使いはこの社会から阻害される社会的少数派だ。どんなに足掻いても、結局は社会に拒まれ、それは酷い末路を辿る。それを知らないお前ではないはずだ」
そ、それは……
「お前の居場所はジョースターではない。DIO様の元だ。本当はお前も気付いているんだろう?お前の居場所はここじゃないと」
ち…違う……私は…
(!)
由来は突然体が重くなっていき、じわじわと意識が遠のいていくのを感じた。
体内の血流が止まっていく。心臓の鼓動が弱まっていく。
もう死期がすぐそこだと、体で分かった。
「……アナタが…私の何を知ろうが…どうでも…いい。だけど…アンタの狙いが、本当に私なら……約束しろ。あの子を…解放しろ。あの子は…関係…ないだろう…」
由来はせめて無関係のインディラを助けることを要求した。
「……フッ。いいだろう。それくらいは聞いてやる。どうせあの小娘の役目は終わった」
男は表面上は由来の意志を汲み取ったが、薄ら笑いを浮かべていた。
あの小娘を見逃したところで、義足にまた絶望を抱くだけだ。苦しい現実が待ちかまえているだけだ。
それにお前がそれに嘆くことはない由来。目覚めたときはもう
・・・・・・・・・・・・・・
お前じゃなくなっているからな。
(どうやらここまでのようだ……)
もう自分には、敵を睨み付けることも、指一本動かすこともできない。
日本を出る前、ホリィさんにまた会う約束をしたかな……
まさか…私の方が約束を破ってしまうとは……
心に迷いがある人から敗北するのは当然だ。
私は心のどこかで葛藤していた。
私はホワイトシャドウを制御しきれない。こんな状態になる前でも、ずっと怖かった。
ホワイトシャドウのことが、ずっと怖かった。