第8章 雪解け
「……プッ。死に際の言葉が
・・
それか。スタンドを返せだと?」
男は面白おかしそうに笑った。
「だがその願いには応じられないな。スタンドを返せばお前はまた抵抗する。だから死ね」
この男、何て奴だ。
殺してでも私をDIOの所へ連れて行くのか?
まさか、DIOは私の能力に目を付けているのではなく、ジョースターさん側の仲間が少しでも減ることを望んでいるのか。
でも、じゃあ何で今まで私を本気で殺しにこなかったのかって話になる。
ダークブルームーンの時、ストレングスの時、シンガポールのチンピラたちの時。
何故か敵が私に向けた殺意が、ジョースターさんたちに向けたときに比べて全くなかったのが気になっていた。
女だから手加減するとかそんな甘ちゃんなら、こっちが有利だと思っていた。
そういえば、今頃…
「アヴ…ドゥルさんと…ポルナレフ…さんは……」
「ああ?ああ、アヴドゥルは死んだ。ポルナレフはもうじき花京院と一緒に始末される頃だな。ていうか、しぶといな。まだ死なねえのかお前?最後の言葉まだあるのか」
アヴドゥルさん…!
この男。全ては私を連れて帰るために仕組んだことだと、さっき言った。
なら、アヴドゥルを挑発させて敵と対峙しているポルナレフさんのところへ行かせたのも、その混乱を利用して私たちを分断させたのも……
(コイツ……スタンドを抜かれてもまだ死んでねえ。抜かれた奴は2分も経たない内に生命活動が停止するって、あの神父は言ってたが……)
仲間が来たら厄介だ。とは言っても、ここに辿り着くのは不可能だ。
何故なら俺のスタンド“ウォンテッド”の空間操作で、誰もこの場所に気付くことはないからだ。
それに、コイツがもうスタンド攻撃は出せないのは明白。
だが死ぬ前に
・・・・・・・・
自覚させてやるか。
「なあ由来。最後にお前に聞いてやる。お前、自分のスタンドをいらない、目障りだと思っていたのに急に返せだ、なんて、おかしいと思わねえか?」
「!!」
男の予想通り由来はその言葉を聞いた途端、面を食らったような顔をした。
「スタンドは人殺しの道具。そう自分に言い聞かせてきたお前は、それで人を救えると、本気で思っているのか?」
「……余計なお世話だ。アンタに…私の何が分かるっていうの?」