第7章 敵の的
「それにしても、お姉ちゃん。腕にかけた呪いを、まさか自分自身の腕を凍らせることで、感覚を麻痺させて痛みをなくしているなんて。驚きだよ」
由来の腕はさっきよりも冷たくなっていた。
低体温になることは、生物的にも非常に危険な状態だ。
氷を操る由来自身が一番よく分かっていた。
「しかも、余命はもって1年のはずが、2年ももつなんて。人並み以上の生命力。
スタンド以外の何か別の能力を持っているのかな?」
「……随分とおしゃべりだね。君のように隙だらけなら、私が今この手付かずの腕で殴ることだってできる」
「フフフ。そんなカチカチに凍った腕じゃ、私を倒すことはできないよ。いや、無理に動かさない方がいいよ。下手したら腕無くなるよ」
インディラはずっと笑みを浮かべている。しかも、
「……まさか、敵であるこの私を…心配しているの?」
由来は首を掴まれて閉塞感がありながら、とにかく考えた。
(この子を、ジョースターさんと承太郎の元に行かせるわけにはいかない…)
敵は他にも、ポルナレフさんが出会った、両手とも右手の男もいる。
それだけじゃないかもしれない。
今、私ができることは、この子を何とか…
「そうだよ。だって私の任務は、アヴドゥルとポルナレフじゃない。ましてやジョースターも今はどうでもいいんだ」
え?
敵の言動が理解できなかった。
じゃあ、ホテルの1階でアヴドゥルさんを挑発したのは?
私たちの動揺を誘ってバラバラにして、ジョースターさんや承太郎を始末するためじゃないの?
DIOにとってジョースターを殺すことが最大の目的。
私はその駒にするために、2年前、プッチとやらを使って勧誘してきた。
だけど私は断った。
断る者はDIOに始末されるのが普通だ。
現に、DISCも取られて腕の呪いとやらも付けられて、もう私の命はもってそう長くない。
そのとどめを刺すために、ここにいるんじゃあないのか?
「何か勘違いしてるらしいから言うね。私がDIO様から仰せつかったのは、
アナタを連れて帰ることだよ」