第7章 敵の的
現在
私がジョースターさんと共に旅をしているのは、ホリィさんを救うためであり、そのために己の“スタンド”を取り戻す旅でもあった。
でも時々、分からなくなっていた。
“スタンド”を取り戻せば元の力が戻って、よりあの人たちの手助けになれると、何度も自分に言い聞かせていた。
そうすることで、“スタンド”を肯定していた。
でも、心の隅では覚えていた。
“この力”自体が己にとっての敵であることを、幼い頃から思い知らされてきたことを。
自身に問いかけたことがある。
お前は心の底から、ホワイトシャドウを取り戻したいのか?と。
本当はこんな力、取り戻さなくてもいいと思ってるのではないか?無くなって命が尽きるなら、それも悪くないんじゃあないか?と。
(私は……)
「どうしたのお姉ちゃん?顔色が悪いよ」
「!」
敵であるインディラが、由来を心配そうに声をかけた。
「敵の前でそんな思案に暮れている顔をしている人は、大体やられるんだよ。お姉ちゃんは体調以前に、心に迷いがあるから、私には勝てないよ」
「……だけど、アナタを倒すことに、迷いはない!」
由来は移動して、敵と自分の間に水溜まりが連なっている場所に立った。
シュババハバッ!
水溜まりを一気に凍らせて、遠距離攻撃を繰り出した。
「無駄よ」
パッガキィーンッ!
「!」
インディラはスタンドで氷を発現させ、また相殺した。
太陽の反射で氷の破片がキラキラきれいに舞った。
「アナタ、その氷の能力……私から奪ったものだね?」
「ご名答。2年前、アナタから奪ったDISCの1つを只今レンタル中でね。延滞料金も発生しないし便利だよ」
インディラは頭に手を突っ込んだ。
「?!」
するとそこから、見覚えのあるものが出てきた。
「やっぱりそれ…!」
ホワイトシャドウが描かれたDISC。間違いなく、ホワイトシャドウの力の一部だ。
「2年前、私はプッチという男と協力して、お姉ちゃんから記憶とスタンドを奪うことに成功した。そしてその1つがこれよ」
インディラは再び頭の中にしまい込み、スタンドの腕で空気を振り払うと、氷が勢いよく現れた。