第7章 敵の的
2年前
「グッ…!!!」
由来はか細い声を出して、腕に刻まれた鎖のタトゥーを腕ごと握り締めた。
「それは“ある”暗示をかけている。DIOに忠誠を誓うことを強く願えば、その呪いは消える。お前は自動的にDIOの元へ行くことになる」
(暗示……?)
よく見たら、スタンドの腕には本物の鎖のようなものが繋がれていることに気が付いた。
ホワイトシャドウも、とても苦しそうだ。
グォォォッ!
「ホワイトシャドウ!」
他の心配をしている余裕もなかった。
自分の腕の激痛で、段々と意識が遠のいていく感覚に襲われた。
「かつてその痛みにより死に、また自ら命を絶った者もいる」
プッチは足元の由来を見下ろした。
「……私は…DIOにつくくらいなら、死んだ方がマシだ」
しかし由来はこんな状態でも、服従するという選択肢を選ばなかった。
こんな奴と同類にはなりたくない一心でいた。
「これでもまだ意思を改めないか。よかろう。だったら短い時の中でじっくり考えるんだな。一般人も自分のスタンドも守れなかった己の弱さを。残された“悲しみの記憶”を思い出しながら。自分の運命に嘆きながら。
そうすれば、自分の居場所はこんな所ではないことに気付くのも、そう遅くはない」
プッチはその場を去るために、窓の縁に足をかけた。
「いや…お前は今まで、
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自分のスタンドでさえ憎かったから、守れなかった後ろめたさを感じる必要もないか……」
「!」
“ち、違う…私は……”
プッチが持つスタンドDISCに、苦しんでいるホワイトシャドウがぼやけて見えた。
(!。ホワイト…シャドウ?)
切り離された自分のスタンドの一部と目が合った。
「!」
そのホワイトシャドウは、とても悲しい目で私を見ていた。
“違う。違うんだよホワイトシャドウ……私は……”
プッチと化け物スタンドは窓の外へ消えていった。
「ま、待てッ!ホワイトシャドウ!」
手を伸ばしたが、敵はもういなくなった。
「シロォーーーッ!!!!」
私は敵にスタンドの大部分と記憶を奪われた。
この時から私は、力のほとんどが使えなくなり、昔の悲しい記憶しか思い出せなくなった。
唯一、楽しい記憶を思い出す方法は、ピアノを弾いてその音色を聴くことだった。