第7章 敵の的
“決心はようやく付いたか?”
「!」
人気のない荒野のど真ん中にいるのに、頭の中に知らない声が響いた。
(この声、昨日と違う声だ……)
でも私にコンタクトを取る手口は同じだ。なのに声が違うとはどういうことだ?
見えない敵をキョロキョロ探した。
「決心?何のことなの?」
“とぼけるんじゃない。2年前、ちゃんとアイツがお前に言ったではないか。忘れたとは言わせないぞ。お前がスタンドの大部分を失ったあの時だ”
ズキンッ!
「ッ!!」
急に頭が痛くなった。
それと同時に、由来は過去の残像を掘り出した。
2年前
「うぅ……はッ!」
カバッ
起き上がったら、私は白いベッドの上にいた。
(ここは…病院?)
体中に緑の細いコードが張っている。機械に繋がれている。
(わ、たしは…一体……)
コードを全て取って、地面に足を付けて立ち上がろうとしたが、ふらついてバランスを崩した。
「グッ…!」
ダァンッ
体をモロに床に叩きつけて、激しい痛みが体中を走った。
(な、何なの…これ…)
体が、思うように動かない。筋肉が、硬直しているようだ。
風邪をこじらせて数日間寝たきりの後、久しぶりのシャバに出た時の脱力感とはわけが違う。
(な、ナースコールを…)
ベッドのそばにぶら下がってるオレンジ色のボタンを押そうと手を伸ばした。
(ダメだ。体が…全然…動かない……)
・・・・・・・・
“それはそうだろう。死んでいたからな”
「!!」
シュウンッ!
ホワイトシャドウを背後に出して、迎撃体勢になった。
“その状態でもスタンドを出せるとは。相変わらずの生命力だな。由来”
「だ、誰…なの?」
病室の壁に、ドロドロしたスタンドが現れた。
「!」
そしてカーテンの死角から、男が1人、そよ風のようにフワリと姿を現した。
「この顔に見覚えはないのかね?」
見た目は青年の外国人で、服装は聖職者のような男だった。
「知、らない…そんな特徴的すぎる顔なんて……」
「…確かにその表情。嘘を付いてるわけではなさそうだな。このエンリコ・プッチと会うのも、今回が初めてか?」