第7章 敵の的
由来はちゃんと作戦に耳を傾けながら、腕をぐっと掴んで痛みを堪えていた。
(ッ…!)
皆に見られないように隠した。
(さっきよりも…痛みの感覚が…短くなってきた……)
ジョースターさんたちの前に現れたのは、もしかして……
「では分かれるぞ!皆、気をつけてくれ!」
ジョセフは由来の体調不良に気付かないほど焦っていて、ジョースターたちは四方に向かって走っていった。
ジョセフは昨日のアヴドゥルの占いをふと思い出した。
“明日は人生で数少ない不幸と試練が待ち受ける”
『つまり、我々5人のうちの誰かが、明日とんでもない災難に見まわれるということです』
(頼む…外れておくれ…)
ポルナレフ。アヴドゥル。無事でいてくれ!
この時のジョセフは思いも寄らなかっただろう。
この自分の判断で、“由来が”その不幸に見まわれることに。
由来は人ごみを走って、キョロキョロ辺りを見渡した。
(どこにいるんですか、アヴドゥルさん?)
あの人はスタンドや地理について誰よりも詳しい。
あの人の知識もそのスタンド能力は、この先の旅でも欠かせない存在だ。
(目がかすむ。こんな時に…)
視界がぼやけて、遠くを良く見渡せない。
由来は右目を抑えた。
目はだめでも、血のにおいは分かる。
少しでも怪我を負っていたら、すぐに気付くことが出来るが。
「!」
そう思っていた矢先、血のにおいが町外れの荒野の方からしてきた。
(向こうか…!)
こんなにはっきりと感じるのは、向こうの誰かが大量出血している証拠だ。
たとえそれがアヴドゥルさんやポルナレフさんじゃない、ただの一般人でも放っておくわけにはいかない。
由来はその場所に走って向かった。
着いた先には負傷者など誰もいなく、あったのは
・・
赤い水たまりだった。
「え……」
はめられた。