第7章 敵の的
「どこでそんなことを…」
「敵がお前のことをよく知ってる風に言ってたのを聞いただけだ。で、どうなんだ?」
由来は動揺を押し殺して、平然を保った。
「アナタは深煎りコーヒーは好きらしいけど、他人に深入りするタイプじゃないと思っていたよ」
それも、会ってそんなに月日が経ってないのに。
「でもアナタも良く知っているはず。私はこの通りちゃんとスタンドを持っているよ」
ホワイトシャドウを出した。
「確かに2年前の襲撃の後遺症みたいなものは、今でも少し感じるけど、でもその張本人が死んだなら全て終わったことじゃあない?」
確かに。襲撃してきた敵が死んだのならば、そのスタンド能力の呪いも解除されると考えるのは普通。
それか、本体が死んでも解除されないとしても、時間が経ってから解除されるか、何か特別な条件を満たせば呪いは解ける。
(だがどうにも腑に落ちない。今までのDIOの刺客は、俺たちが手こずるほどの凄腕の奴らばかりだった。それなのに列車で死んでいたなんて…)
転んで頭をぶつけるなんて、そんなマヌケな訳もない。
まるで、あたかも
・・・・・・・・
死んだかのように見せかけているようだ。
「フェイクかもしれねー。その後遺症とやらが治るまでは…」
「アナタは、そんな余裕はないはず…」
「!」
由来は承太郎の話途中に唐突に口を開いた。
「あ?」
「たとえ私が襲撃された事実があっても、DIOの全ての刺客の目的はたった一つ。アナタを殺すことじゃあないか」
由来は自分の体調不良なんかよりも、承太郎のことをとても心配していた。
階段で落ちたところを助けたときから。
「2年前も恐らく、敵はアナタを探すために日本にいて、そこで偶然スタンド使い同士である私と波長が合って、遭遇したんだ」
由来はハッとなって訂正した。
「べ、別にアナタを責めているわけじゃないの。ごめんなさい。言い方が悪かった。私が言いたいのは、他人のことよりも自分の状況を見た方がいい。花京院くんはエジプトでDIOに直接会ったらしいけど、DIOが花京院くんを気に入ったのは、アナタと同じ日本在籍だからだよ」
「……今日はえらく喋るじゃあねえか。お前」
自分の危機的な状況を事細かに説明されても、承太郎は意外とマイペースだった。