第7章 敵の的
「……分からない。でも、同じ入れ墨が入った変死体なんて、そんな不可解なことが起きるのは、大体はスタンドだよ」
サメよりも早く動く謎の生き物や独りでに動く貨物船。
今までそんな奇妙なスタンドを見てきた。
「つまり敵は無関係の人間を殺して、怪盗がお宝を盗んだ後メッセージを残すみてえに、死体の腕に刺青を残した。あれは敵のスタンド能力の痕跡ってことか?」
「……恐らく」
「なら俺たちはずっと“尾行”されてたってことか」
「“尾行”……少し違うかもしれない。恐らく、“挑発”してるんだと思う。無関係の人の死体を晒して、私たちを揺さぶろうとしている、と言った方が正しいかもしれない」
飛行機で戦ったクワガタスタンド、タワーオブグレーも同じ手口を使っていた。
乗客の舌を躊躇いもなく引きちぎって、皆殺しにした。
アヴドゥルは、そんな劣悪で外道極まりない敵に怒りを覚え、冷静さを失い熱くなった。
敵は目的のためなら、何の手段をも選ばない、そんな輩ばかりだ。
「……でも、どうやら私の目的はすでに果たされちゃったらしいよ」
「どういうことだ?」
由来は承太郎が持ってる新聞に載っている事件現場の写真を指さした。
「その男で間違いない……2年前、私を襲撃してきたDIOの手下」
「!!」
承太郎は新聞の写真を慌てて見た。
確かに、被害者の中年の男の顔写真があった。
「コイツが、お前の敵…」
顔を見上げたら、由来の顔色が悪かった。
昔の悪い記憶を思い出しているようで、何かに怯えているようだった。
この男で間違はなさそうだ。
(だが何故死んでいる?DIOの別の刺客に殺されたのか?)
「とにかく、このことをジョースターさんに伝えておく必要がある」
由来は下の階にいる皆と合流するために階段に向かおうと歩いた。
「「スタンドを奪われた」ってのは、どういうことだ?」
「!」
ピタッ
承太郎の言葉で足を止めた。
その様子からして、彼女は隠していたという確信が持てた。
「やっぱり知ってたんだな」
承太郎の声が後ろから近付くにつれて、由来の緊張が高まった。